Constellation

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学生のころ、バイトでコンポーネントステレオを買った。アンプはヤマハ、スピーカーはダイヤトーン、チューナーはトリオ、レコードプレーヤーはソニーだった。ある日、それらの装置を買った店から、今度、オーディオマニアを集めて音楽鑑賞会をするから、好きなレコードをもって店に遊びに来てください、との招待を受けた。当時、ぼくのお気に入りレコードは冨田勲のシンセサイザー音楽、ドビュッシーの「月の光」だった。鑑賞会で、ぼくのレコードを演奏する順番が来た。スピーカーからシンセサイザーの電子音が流れ始めた。するとオーディオマニアたちはにわかにざわめき、中には興をそがれたのか席を立つ人も現れた。以来、好きな音楽は?と聞かれても、シンセサイザー音楽です、と答える勇気はなくなった。昨夜遅く、数日前に録画した冨田勲の追悼番組を見た。三つ放送された特集番組のうち、BSでやっていた番組の最後で月の光が演奏された。5.1チャンネルで放送されていたので、音が四方からぼくを包んだ。ぼくは目を閉じた。音は鮮やかな色を帯びて散っては集まり、集まっては散っていった。そしていつしか虚空に吸い込まれ、闇が残った

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