ずいぶん長いこと映画を見なかった。見たいと思う映画がなかった。いい映画はたくさんある。でも見たい映画はそれとは違う。ぼくは見たいと思わない映画は見ない。最近、特にその傾向が強くなった。ジジーになってきたことの表れかもしれない。映画は映画館で見るのがいいに決まっているのだけど、めんどうなので、DVDになってから自宅のプロジェクターで見る。この前、某F少年がそのブログに感想を述べていた「グレート・ビューティー」という映画を借り、久しぶりにプロジェクターに灯を入れた。おもしろかった。フェリーニの「甘い生活」みたいなものを想像していたけど、そうではなかった。完全版「ニューシネマパラダイス」(決して劇場版ではなく)のサルヴァトーレと同じく、成就しなかった恋がその主題となって浮かび上がる。人間とは何か、人生とは何か。おそらく小説家の描くテーマはそれだろう。もし小説家が65歳を過ぎたある日、思いがけないきっかけでその答えの片鱗を嗅ぎつけたとしたら