眠りからさめたとき、ぼくはあの夜空の水盤以外の何も見なかった。そのゆえはぼくがとある砂丘の頂点に腕を十字に組んで、あの星の生簀に顔を向けて横たわっていたからだ。自分の目の前のこの深さが何であるかまだ気づかないうちに、ぼくは眩暈にとらわれた。この深さとぼくとのあいだに、身をささえる木の根もなければ、屋根一つ、木の枝一本ありはしないので、いつしか拠所を失って、ぼくはダイビングする人のように墜落に身をまかせていた。サン・テグジュペリ「人間の土地」より某F少年は昨日、ハワイの某天文台のある山に登り、そこで満天の星空を仰ぎ見、圧倒されたという。なんともうらやましい話。ぼくはたった今まで家の屋上で夜空を眺めていたが、かろうじて白鳥座、カシオペア座、アンドロメダ座、そしてプレアデスが東の空にぼんやり霞んで見えただけだった。さびしい限りである。星の生簀。ああ、いつの日かぼくもそこに墜落したい