昨日、午後4時ころ、ぼくは北のほうにある山上の団地を当て所もなく歩いていた。知らない町を歩き回るのはとても楽しい。でも時はあっという間に過ぎていく。暗くなってきたので時計を見ると6時を指そうとしていた。そうだ、6時には帰らなくてはいけない。
ただいま、と言ってぼくは家のドアを開けた。奥から、おかえり、と明るい声がした。しかしそこはぼくの家ではなかった。部屋に入るとテーブルには出来立ての料理が並んでいた。すすめられた席に座ると、目の前には白い皿とローストビーフがあった。
大好物のキッシュ。涙が出るほどうまかった。