すばしこいやつ

昼過ぎのことだ。お客さんから注文のあったブラジルコーヒーを袋に詰めるべく、その容器のところに行くと、そこに小さな蚊を発見した。そいつは先ほど、ぼくの腕から血を吸って逃げた生意気な蚊であった。ぼくは怒りに燃え、お客さんのことなど忘れて蚊を追い回し始めたが、その蚊はすばしこく、なかなか叩き落せない。見ていたお客さんも「右、ほらそこそこ、もう、なにやってんのよ」と興奮して叫び始めた。結局蚊はどこかに逃げてしまったが、その数分後、お客さんのそばに現れ、お客さんの攻撃を軽くかわしてどこかに消えた。お客さんは腕をかまれていた。