カウンターの電球が切れたので、同等の明るさのLED電球をつけてみた。色は電球色をチョイス。ぼくは、明るさや色で違和感が生ずるのではないかと思ったが、そんな心配はまったく無用だった。LED電球はふつうの白熱電球にすっかり成りすまし、カウンターに座ったお客さんで気づく人は一人もいなかった。ぼくがそのことを告げると、お客さんは一様に電球を見上げ、手で触り、「ほんとだ、冷たい!」と驚きの声を上げた。ぼくは、むかし見たあの映画を思い出した。「二つで十分ですよ」そう、知る人ぞ知るSF映画の名作、ブレードランナーだ。舞台は近未来。本物の動物はほとんど絶滅し、人は本物そっくりの、電気犬や電気羊など人造のペットを購入し、飼っている。本物は高価すぎて、一般人には手が出せないのだ。午前中にいらしたお客さんがLED電球を眺めてニヤリと笑った。ぼくは本物の白熱電球を何個かストックしているんですよ。