やっと少し楽になった。まさかこんなに落ち込むとは。
原因は、あの凄絶な映像ではなく、ネットのニュースで見た、ある被災現場の描写だった。
その中の一節が瞬時にぼくを捕らえ、ぼくをその場所に立たせた。ぼくは、ぼくが見てはならない、あるものを目の当たりにした。
涙があふれだした。ぼくは感情の一部を遮断した。
今日は休みだった。空も晴れていた。でも、いつものようにドライブに行く気力はなかった。
顔を洗ってダイニングに下りていくと、ヨッパライ某が
「弁当を作ったよ、どこか行こう」と明るく言った。
ぼくは少し元気が出てきて、しばらくすると、どこに行くか考え始めた。あの海の近くの丘で、ウグイスの声を聞こう。そして海を見ながら弁当を食おう。
ぼくは車を走らせた。
行く途中の公園で、桜を見た。満開だった。
丘に上るとウグイスが鳴いていた。
ぼくらは凪いだ海を眺めながら弁当を食べた。