ずいぶん昔の話。ぼくが家を建てる決心をしたときの話だ。ぼくは少し変わっていたのかもしれない。普通の人が求めないことをぼくは住居に求めていた。それは、目に見えない力を遮断することのできる家だった。その力とは、電磁波はもちろん、磁力、引力、テレパシー、念力など、五官で捕らえられない力全般であって、それらの及ばない場所で、ぐっすり眠りたい、と願っていたのである。今でこそ、電磁波が身体に与える影響が問題になっているが、当時はそんな事を気にかける人はまれだった。何でそんな事を真剣に考えていたのか、今では思い出せない。