谷を流れる川に沿って下っていった。15分ほど歩くと傾斜は急になだらかになり、景色が開けて田園風景が広がった。川は稲刈りの終わった田んぼの間を緩い弧を描いて街に向かっている。ぼくは変わらぬ調子で川沿いの道を歩いていった。しばらく歩くと川の土手にコスモスが群生し、風に揺れているのが見えてきた。おそらく風に運ばれた種が時間をかけて少しずつ増えていったのだろう。ぼくはカメラを取り出して写真を撮り始めた。するとどこからか男の声がした。
「きれいやっどが」
訳 「そのコスモス、きれいだろう?」
声のほうを見ると、麦わら帽をかぶった農作業服のオヤジがこちらを見てニヤニヤしている。
「ええ、野生のコスモスはやはり一段ときれいですね」とぼくは相槌を打った。すると麦わらのオヤジはうれしそうに言った。
「そんたーおいが植えたたっど」
訳 「そのコスモスはワシが植えたんだ。どうだ、きれいだろう、がはは」
“土手のコスモス” への5件の返信
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このくだり、たまらないね。[E:happy02]
こ~ひ~が きれもした(これって、ただしいかごんま弁??)
無造作に咲く可憐なコスモスと天の雲。構図バッチリ↑(^^_)ルン♪
世の中には”人の喜び=自分の喜び”と感じ、そのために行動する奇特な人が数多くいらっしゃいますよね。[E:cherry]
☆やまのさん、近くの公園のコスモス、まだあまり咲いてないようですね。月曜日に見に行ったときも三分咲き程度でしたよ。あと一週間くらいでしょうか。コーヒー、明日にでもこけきっくんやい。まっちょいもんでな~
☆chikako~♪さん、人と動物の違いがそれですよね。人間は動物とは違い、利他的な行動ができる。それを喜びとすることができる。人って、すばらしいですよね。
[E:sign03]
美しい。
「脳の情動系システムが活発に働いて」さ、またまた欲しい一枚への記憶に留まったと思いますです。[E:note]
そうですか、ぼくは自分で撮っておきながら、どうしても好きになれない写真なんです。そういう意味でここに載せたんでした。ぼくってひねくれてるかもね(笑)