昼過ぎ、いつもの豆腐屋がやってきた。そして
「うちもレジを置いたよ」
と、うれしそうにいった。
レジとは、お金を入れるレジスターのことである。
「なんだ、おまえのところはレジもなかったのか」
ぼくが驚いていると
「でもさー、使い方が分からなくて」
そうか、使い方が分からないのか。ぼくはうれしくなった。
大きな声で言えないが、実はぼくもよく分からないのだ。
「で、何が分からないんだ」ぼくはえらそうにいった。
豆腐屋はレジのボタンを指差しながら、
「これを押して、次はこれだよね」と、自信なさげにいう。
やれやれ、おまえはこんなことも分からんのか、という態度でぼくは知ってることを適当に教えてやった。
豆腐屋は尊敬のまなざしでぼくを見ていた。
ぼくは満足だった。人に教えるのは実に気持ちがよい。
“俺に訊け” への2件の返信
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こんばんわ↑(^^_)ルン♪
嘔吐菌と2~3日遊んでいたのですけどbyebyeしちゃいました(笑)。
タイトルを見て開高健 『風に訊け』[E:book]を思い出しました。
むかしむかし大事に手元に置いていたこともあったっけ[E:apple]
風に訊け、ぼくにとっての指南書のようなものでした。ぼくはいまだに開くことがありますよ。それこそ風が止まったときに。このブログの上のほうにある風車の絵は、そこからいただいたものです。ちょうど今、彼の晩年の作品「珠玉」を読み返してみようと手に取ったところでした。これを読んでいると、なぜか泣けてくるんです。