店の一角に、例の不思議なドラゴンを置いている。ドラゴンの顔を見つめつつ移動すると、なぜかドラゴンも首を振りながら見つめ返す。これを見たお客さんの反応は様々。
「へぇ~、おもしろいですね」で、終わる人。
「いったいどうなってるんですか?」と、近くによって確かめる人。
無感動、無反応な人。
どちらかと言うと、みんな、大人というか、冷静だ。
しかし今日は違った。
夕方いらしたお客さんは、ドラゴンを見つめつつ移動し始めたとたん、
「ぎゃあ~~~~~~~っ!」と叫び、のけぞった。
おどろいたのは彼女よりぼくのほうだった。
しかしぼくは満足だった。ドラゴンを置いて以来、だれも期待したほど驚かないので落胆していたのである。このドラゴンの展開図がネットに公開されている旨を伝えると、彼女はピカピカの高級用紙に印刷してわざわざ持ってきてくださった。並べてみると、白黒のレーザープリンタ、A4サイズで作ったぼくのドラゴンは悲しいほどに貧相。