休みだったのでドライブに出かけた。昼食をとるために港の近くの料理屋に行くと、玄関の黒板に「今日の日替わり 海老カツ丼 680円」と書いてあった。カツ丼なんか食べたくなかったが「海老カツ」というのが気になって、それを注文した。カツにできるほどのエビとはイセエビであろう、と想像したからである。
しかし、ワクワクしながら食べてみると、それは小エビの詰まったカツであった。満腹したぼくたちは、海に面した某レストランでコーヒーを飲もうということになった。しかし、行ってみると、前回と同じく「準備中」であった。もしかすると定休日を月曜にしたのかもしれない。海に面した某美術館の屋上で海を眺めていたら、アイスクリームを食べたくなったので、海の近くの公園に行くことにした。この公園の売店には、ぼくの好物のアイスモナカが売っているのである。売店に入って、アイスクリームのショーケースを開けると、モナカは、もーなかった。仕方なく、モナカなしで公園をぶらついた。
すると、いっしょに来たヨッパライ某が、「ほら、あの匂い」と、木陰からぼくを呼んだ。行って見ると、ほのかにムスクの匂いがする。ジャコウアゲハだ。風は海から吹いている。防風林を棲みかとしているジャコウアゲハの匂いが風にのって漂ってきたのだった。
ぼくたちは海に向かった。公園を抜け、サイクリングロードを横切り、蔦の絡まる、うっそうとした松林を歩くと、ところどころで、むせるほどにムスクの匂いがする。しかし、肝心のジャコウアゲハの姿が見えない。外は暑いし、どこかで昼寝でもしているのだろう。
ぼくらはそのまま海に抜けた。ほどよい海風が吹き続けていて、知らない国の音楽を聴いているような心地よい気分になる。しばらくぼんやりと、砂浜を歩いていた。