車が目的地に着いたとき、時計は1時をまわっていた。
とにかく腹が減っていたので、湖畔にある食堂で昼食にした。その店の前には、そうめん流し機も並んでいて、そのうち数台がスタンバイしていた。
以前、ここで食べた時、鯉のあらい定食がおいしかったので、今日もそれを頼んだ。注文すると、おかみさんが大きな網を持って店の前の生簀に向かう。店は質素だけど、ここの定食は一級品だ。ほんとにおいしかった。
腹がふくれたので、いつものようにボートに乗ることにした。
目立ちたい年頃の某F少年なら、きっと派手なピンクのミッシー号を選ぶであろうが、
ぼくはもう十分に大人なので、目立たない、ふつうの手漕ぎボートを選んだ。
湖の中央付近にボートを停め、ぼくは湖の深さを想像した。この湖の水深は、その大きさの割にけっこう深く、100m近くある。あのジャック・マイヨールによる素潜りの世界記録が105m。ほんとうに深い。