氷の世界

090429_01
冬はぼくの中にある。ぼくの中に冬がいる。冬は息を白くし、雪を降らせ、水を凍らせる。でもそれは、みんなの冬だ。ぼくの冬は、ぼくの世界だけを凍らせる。ぼくだけに冷たい風が吹く。ぼくの顔は凍り、笑うことができない。何もかもが凍りついている。いつもの人がいつもの人に見えない。凍っている。凍ったまましゃべっている。ぼくのまわりに氷の壁があって、ぼくは信じられないくらい孤立している。だけど、もしかすると、これが正常な、あるべき感覚なのかもしれない。だれもがほんとうは孤独だからだ。
明日の朝起きたとき、冬が去っていればいいのだけど。