こういう妙な仕事をしていると、たまに雑誌の取材が来る。
そんな時、ぼくは当然のようにカメラマンに注文をつける。
「いいか、カッコよく撮るんだぞ、本気だからな」
「わかりました、まかしてください」カメラマンはニヤリと笑う。
しかし、できあがった雑誌の写真を見て、ぼくはいつもがっかりする。
昨夜、ぼくは妻に向かって、ため息混じりにつぶやいた。
「雑誌のカメラマンときたら、カッコよく写せというのに、神経質でイジワルそうな顔の写真ばかり撮るんだ」
すると妻は言った。
「でも、いつもあんな顔だよ」
昼ごろ、いつもの某仕事男が店に来た。そこでぼくは彼に頼んでみた。
「そろそろ遺影用の写真が欲しいと思ってね。撮ってくれ」
仕事柄、彼の写真の腕はなかなかのものだ。ぼくはにっこり微笑んでポーズをとった。仕事男はアングルを決め、シャッターを切った。しかし、なぜか液晶画面を見ながら首をひねっている。どれどれ。ぼくは画面を覗き込んだ。うっ。ぼくはガクゼンとした。微笑んだはずなのに、怒ったような顔だ。こんなはずじゃない。もう一枚。といって、ぼくは特別用の笑顔を作った。彼はシャッターを切った。が、再生された画面を見て、またもや首をひねっている。悪い予感がした。見ると、さっきより恐い顔で写っている。ぼくはどうしても腑に落ちず、もう一枚撮ってもらった。満面に笑みをたたえて。しかし、結果は更にも増して悪いものとなっていた。いったいこれはどういうことだ。ぼくはゾッとした。こいつはまさにスリラーそのものじゃないか。
“スリラー” への4件の返信
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こんにちは。
もしかして「カメラマン」というだけあって「男性」が撮影されたのでは・・・。
スプーンさんなら「女性」の写真家なら・・・・(笑)。
ちなみに、9時から男の場合だと「ニヤケテ」いるかも[E:coldsweats01]。
それでは・・・。
するとなんですか? 9時から男さんは「もしカメラマンがカワイイ女の子だったら、そうはならなかっただろう」と、おっしゃりたいのですね。
そうですね!
たぶん、そうかも
今日はごちそうさまでした。
最近お店に行くと,決まって誰かが来られますね。(私がお店に行く時間帯が変わったせいもあるからでしょうが)今日は「仕事男さん」にお会いできました。今,思い出したのですが,以前スプーンさんにコピーしていただいた,あのカレンダーを書かれている方だと気付きました。お礼,言いそびれました・・・。
marutaさん、昨日はどうも。
そうですね、ゲゲゲの鬼太郎に出てくるキャラクターはネズミ男ですが、昨日お会いしたのは、あれがウワサの「仕事男」です。
彼が問わず語りに何か、ぼくのことをブツブツ語していたようですが、ぼく自身、知らないことだったので、ちょっとびっくりしました。カレンダーの件、今度彼が来たら話しておきますね。