月曜日の朝。小雨がぱらついている。ここは病院の近くにある公園。昔、ここに城があったという
一週間分の買い物を済ませ、ヨッパライ某が髪を切りたいというので、いつもの散髪屋さんで彼女を下ろし、ぼくは動物園横のバラ園に向かった
バラはまだほとんど咲いてなかった
もう、藤の季節が始まっている
ぼくは疲れきっていた。遅い夕食を終え、テーブルを立とうとしたとき、ふと傍らに小さなお菓子の箱があるのに気付いた。ふたを開けると柏餅と桜餅が入っていた。ふだんはこういうものには手を出さないのだが、酔っていたせいか桜餅に手が伸びた。口に放り込むと懐かしい香りが広がった。と、突然部屋が天然色に色彩を帯びて明るく広がったように感じられ、思わずあたりを見回してしまった。そういえば、ある本に同じようなことが書いてあった。ただしそれは桜餅ではなくマドレーヌだったが。
しかし、お菓子のかけらのまじった一口の紅茶が、口蓋にふれた瞬間に、私は身ぶるいした、私のなかに起こっている異常なことに気がついて。すばらしい快感が私を襲ったのであった、孤立した、原因のわからない快感である。その快感は、たちまち私に人生の転変を無縁のものにし、人生の災厄を無害だと思わせ、人生の短さを錯覚だと感じさせたのであった、あたかも恋のはたらきとおなじように、そして何か貴重な本質で私を満たしながら、というよりも、その本質は私のなかにあるのではなくて、私そのものであった。私は自分をつまらないもの、偶発的なもの、死すべきものと感じることをすでにやめていた。
マルセル・プルースト 失われた時を求めて
なお、翌日ぼくは柏餅でも試してみたが、何も起こらなかった
ここは病院近くの城跡。今は公園になっている。月曜日の朝はここにいる。こともある。この奥に「井戸跡」と書かれた案内札が立っていて、こう書かれている
井戸跡
何時の時代のことかわかりませんが、この井戸跡に鶏を投げ入れたら、はるか下の神の川に出たという伝説が残されています。
ヨッパライ某が寿司を食べたいというので一週間分の買い物を済ませた後、山を越えて漁港近くのすし屋に向かった
いつもの安い方のスシ定食。ぼくも今日はそれにした。スシ屋のおねーさんが、久しぶりだね、と言った。そうかもしれない、と思った
公園を縦断して海に出る。何かから逃げるように
ここまで来て急に足がつった。たいして歩いてもいないのに
帰りに肉の直販所に寄って肉を買い、今夜は焼き肉をすることになった。久しぶりのオリオン。冬が終わって、リブート