屋上に出て星を眺めていたら遠くでセミが鳴いていた。ツクツクボウシの声だった。静まり返った星空の下、それは寂しく響いていた。
イフードードー
きみの匂い
時間
ある日の雲
もしも明日が晴れなら
もし明日、晴れてたら海に泳ぎに行こうと思う。
おやすみー
夜の散歩
忘れられた日本人
午後、いつものように金曜日の男がやってきて豆腐を置いていった。彼は田舎の山奥で豆腐を作っている。モロヘイヤはいるね、というので、なんでもいいからくれ、というと、道端に生えていそうな変な草をくれた。たまたま居合わせたお客さんが、それ、ねばねばしてうまいわよ、といった。先週は取れたての地鶏の卵、その前は巨大なニガウリを彼は置いていった。家に帰ってぼくはヨッパライ某にいった。田舎はいいぜ、道端にいろんな食い物が生えていて、食いたいときにちぎって食うんだ。鳥だってそこらを走り回ってるのを捕まえて羽根をむしって食う。いいなぁ田舎に暮らしたいな。するとヨッパライ某はいった。大きな虫がいるからヤダ!ぜったいイヤ。
ずいぶん前、金曜日の男の家に遊びに行った時のこと。家の前の細い道で変な外人に会った。風呂敷包みをぶら下げた棒を肩にかつぎ、足にはわらじを履いている。ニヤニヤしながら近寄ってきて、あなたはどんな仕事をしているのか、と聞いてきた。今度コーヒー屋をするつもりだ、というと、ココアはないのかという。ない、というと、残念だな、といってどこかに行った。あとで金曜日の男に、頭のおかしい外人に会った、というと、それはジェフだという。なんでも、彼の家よりさらに上ったところでニワトリと暮らしているらしい。数日前、シロクマを食べに行ったついでに宮本常一の「忘れられた日本人」を買ってきた。前から読もうと思っていて忘れていた本だ。最近、この本を英訳してアメリカで出版した人がいる。例の変な外人だ。
恋愛小説を読んでます
ぼくはその小説を机にほうって、目を閉じた。
1、ぼくは幻を外から見ている
2、ぼくは幻の中にいる
3、ぼくが幻である
一年の折り返し点
盆。その由来は、銅鑼の音、ボン、である。
その年を折り返したよ、という合図の音だ。
なお、これはウソです。
人生に折り返し地点を発見するような人間に生まれなくてよかったよ。そんな男は女をしあわせにはできないんだ。