店のテントはずいぶん前から穴が開いている。修理代を見積もったら5000円くらいと言われた。数年前の話だから、穴が成長した今、それは10000円くらいに膨らんでいるかもしれない。毎年この時期になると、この穴から冷蔵庫付近に夕日が差してくる。悪くない。19世紀のヨーロッパのような趣がある。ヨーロッパにはまだ行ってないけど、そんな気がする
South Bound
人生時間
午前中いらしたお客さんは、朝一番で映画を見て、その帰りに寄ったのだそうだ。何を見たんですか?ときくと、高倉健が出ているやつ、といった。ずいぶん年をとっていてびっくりした。見ないほうがよかった、と、さびしそうにいった。昼過ぎいらしたお客さんも、どういうわけか同じ話を始め、同じようなことをいった。ぼくは邦画には興味がないけど、ちょっと気になってyoutubeで予告編を見てみた。おじいさんになった高倉健がいた。夕方、twitterでつぶやいたら、ある人がそれに応えてwikipediaの人生時間という項目にリンクを張っていた。それによると人生時間とは人生を1日の時間であらわしたもので、年齢を3で割ることで算出される。30歳の人は午前10時といった具合。ぼくはおそるおそる電卓を叩いた。表示されたのは店の閉店前の時間だった。なるほど、と思った。そこでふいに高倉健のことを思い出し、電卓を叩いた。出てきた数字を見て思わず吹きだしてしまった
知らない人
フェイス・オフ
痩せましたね
店にいらっしゃった常連さんが口々に言う。
おとといまで、そんなこと一度も言われなかったのに。
実は昨日、あるものを取り替えたのだ