プロトコルエラー

ぼくはテレビをまったく見ないし、新聞もほとんど読まない。それで問題が起きないから、このままでかまわないと思っていた。しかし最近、少し不安になってきた。というのも、家族や友人たちとのありきたりな会話の最中、突然あたかも言葉が通じなくなったかのような、きわめて高いレベルの孤立に直面し、呆然としてしまうことがしばしばだからだ。そのたびぼくは浮力を失った船よろしくその場から沈没してしまう。そのむかし、だれかが、テレビはもう一つの窓である、なんて言っていた。その例えでいえば、窓を持たないぼくは、みんなが知っている窓の向こうの世界を知らないことになる。そう、この世には二種類の人間がいる。電気窓を持っている人と、そうでない人だ。そして電気窓を持っている人たちは、その窓を通して宗教にも似た強い連帯感で結ばれている。なんていうと、ばかばかしい、テレビの見すぎよ、と笑われるに違いない。しかし最近、その窓がやたら高性能、巨大化し、見ている人になにやら呪文をかけているように見えてしょうがない。被害妄想とはこういうのを言うのだろう。ああまたくだらないことを書いてしまった。この窓もさっさと閉じなくては。

雨のうた

ぼくは窓の外を見ている。物思いにふけった雨たちが知らない歌を口ずさんでいる。ぼくは熱い珈琲を飲んでいる。雨の匂いがコーヒーに混ざり、遠い国の花が咲いたようだ。

土手のコスモス

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谷を流れる川に沿って下っていった。15分ほど歩くと傾斜は急になだらかになり、景色が開けて田園風景が広がった。川は稲刈りの終わった田んぼの間を緩い弧を描いて街に向かっている。ぼくは変わらぬ調子で川沿いの道を歩いていった。しばらく歩くと川の土手にコスモスが群生し、風に揺れているのが見えてきた。おそらく風に運ばれた種が時間をかけて少しずつ増えていったのだろう。ぼくはカメラを取り出して写真を撮り始めた。するとどこからか男の声がした。
「きれいやっどが」
訳 「そのコスモス、きれいだろう?」
声のほうを見ると、麦わら帽をかぶった農作業服のオヤジがこちらを見てニヤニヤしている。
「ええ、野生のコスモスはやはり一段ときれいですね」とぼくは相槌を打った。すると麦わらのオヤジはうれしそうに言った。
「そんたーおいが植えたたっど」
訳 「そのコスモスはワシが植えたんだ。どうだ、きれいだろう、がはは」

トウワタとカバマダラ

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ヒマだったのでカメラを持って近所をぶらついてたら、ちょっと先の駐車場にトウワタの花が咲いているのを見つけた。被写体としてなかなか良いような気がしたので、何枚か写真を撮っていると、その葉っぱに世の女性たちが忌み嫌う、あの生物を発見した。
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もちろん、ぼくはなんともない。かわいいとさえ思う。この人の恩遇を受けられない無愛想な生物も、やがて羽化して風に舞えば、少しは女性の気に入る風景になるのだけど。
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安物買いの銭失い

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店の帰り、某電気店に電球を買いに行った。電球売り場に行くと、LED電球がかなり幅を利かせていたのでちょっとびっくり。価格を見ると、どれも3000円近くする。くそ、こんな高い電球、誰が買うんじゃ。とブツブツつぶやきながら、棚の隅を見ると、処分価格、198円というLED電球を発見。何でそんなに安いのかと思ってよく見ると、LED灯数12灯、白熱電灯の5W相当、長寿命20000時間、とある。ふむ、たぶん、この5W相当ちゅうのがマズイんだろう、暗すぎるからな。と勝手に納得し、まぁ198円だし、いっちょ買ってみるか、と、適当に3個つかんでかごに入れようとしたとき、緑色、いう字が目に止まった。ん?緑色。調べてみると、そこにぶら下がっている電球は緑と赤しかない。白はないのか。なかった。赤とグリーン。どこに使えばいいんだ。ま、198円だし、なんとかなるさ。