クジラ

153_1 衛星放送のいいところは地上波に比べ、自然科学番組が豊富なところだと思う。
NHK-hvでカリブ海に集まるマッコウクジラのドキュメンタリーがあったので録画した。このクジラは深海のイカを捕食するために、一気に1000メートルも潜る。巨大な生物がスクリーン上を悠然と泳ぐさまを眺めながら、ぼくは感慨に耽った。
体をくねらせるだけでぐんぐん突き進んでいく。その完成された機能美には、ただ圧倒されるばかり。
人はいったい何をどこまで知ることができるのか。

バベルの塔

窓の外も暗くなってきた。まもなく閉店時間。
ぼくはカウンターのカップルと話している。
丸テーブルでコーヒーを飲んでいる若いカップルのおしゃべりが時々聞こえてくる。
二人の使う言語は日本語ではなく英語でもない。
時々起こる笑い声。
二人はスペイン語で話している。
さっぱりわからない。

大脱走

映画「大脱走」を見た。
ドイツ軍の捕虜収容所から脱出する物語なのだが、こちらの期待に反して失敗に終わる。
アルカトラズからの脱出やショーシャンクの空のような結末を期待して見たのでわだかまりが残った。
とてもいい映画には違いないけど。

天気予報

150_1 今日は月曜日で定休日。数日前の天気予報では雨が降るとのことであったがそんな気配はない。
というわけで、南薩へドライブ。ぼくの勘によれば、フラワーパークのレストランの日替わりメニューが当たりと出た。
ここ数回ハズレを経験したので、そろそろ当たりが出そうな予感がするのである。
正しい名前を忘れたが「天使のエビのバジリコなんとか」と「ベーコンとズッキーニのなんとか」というのが日替わりであった。
天気予報はいつものようにハズレたが、ぼくの日替わり予想は当たりであった。
ドライブから帰って、屋上で夕焼けを見ながら缶ビールを飲んだ。コウモリが飛び交っていた。明日は雨になりそうだ。

ハイライト

今日は父の日だった。
無条件に何かもらえる日というのは、ただ、うれしい。
ぼくが小さかった頃、父に何をあげていただろう。
今は吸わないが、そのころ父はタバコを吸っていた。
ハイライトをプレゼントした記憶がある。
ぼくはタバコを吸わないので分からないが、今でもあるのだろうか、ハイライト。

おしゃべりな午後

きょうは土曜日。
Aさんをはじめ、ユニークなお客様が集合してしまった。
各々、好き勝手なことをしゃべるので、混乱するかと思うとそうならない。
不思議と疎通がはかられてて、初めてのお客様でも孤立することがない。
歯に衣着せぬ乱暴な物言いに見えるが、だれも傷つかないように見える。
子供同士の会話に似せた大人の会話だ。
疲れたが、楽しい午後だった。

気難しいヤツ

機械というヤツは人間と同様、愛情を持って、いたわりながら使うと期待に応えてくれるし、長持ちする。
というのが、ぼくの機械に対する考え方であり、接し方である。
一般に、男は機械いじりが好きである。
ちなみにぼくは機械いじりが大好きである。よって、ぼくは非常に男らしい人間である。
という公式は今のところない。
さて、最近、少々カッティングエッジな機械を購入したのだけど、こいつが気難しい上に気分屋だ。
それはハイビジョンレコーダーなのであるが、時々思い出したように予約録画に失敗する。
それがまた、ぼくがどうしても見たい、と思う番組だけ見事に不発する。今日もそうだった。
拗ねているのか。
思うに、機械と女性は相似点が多い。

ホテル カリフォルニア

梅雨に入っているのだけど、外は明るい。今日は天気がいいようだ。
お店のガラス窓はとても広いのだけど、開けることができない。
一日中、お店に籠もって、珈琲を淹れたり本を読んだり。
もちろん、お客様の相手もする。
無性に青空が恋しくなって、用もないのに外へ出る。
ここは自由なようで自由じゃない。
ホテル カリフォルニアへようこそ。

自慢

145_1 昼前、豆を焼き終わって珈琲を飲んでいるところにオヤジが顔を出した。夜、何度も目が覚めてよく眠れなかったという。最近よく口にするのが、何もすることがない、楽しみがない、である。笑いながら言うので深刻な感じはないが、実につまらなそうだ。珈琲カップを置き、「友達も次々に死んで、遊ぶ相手もいなくなった」と、つぶやく。
ぼくの幼いころの記憶にはオヤジの友達がたくさん登場する。ぼくは男より女性と遊ぶほうが好きだったが、オヤジは男友達とよく遊んでいた。その友達が、ここ数年のうちに次々と死んでいった。そういう年齢なのだ。
「でも、Iさんは元気だぞ。まだまだすることがいっぱいあるみたいで忙しそうだ」
と、ぼくがいうと、オヤジの顔はにわかに明るくなった。
「俺が1番で、あいつは2番だったんだ…写真があるけど、見るか?」と自慢げに言った。何が1番なのか。学業成績ではないことは確かで「俺は裏口入学だったんだ」といつも得意になって話していた。
じゃあ見せて、と言うと、足取りも軽く店を出て行った。

電話の向こうはどんな顔

豆を焼き終わってホッとしているところに電話が鳴った。
「お忙しいところ大変申し訳ありません…」若い女性の声。
「株式会社○○と申します…」
時々電話してくるサラ金会社であった。
ぼくが金に困っているのをどこで知ったか、定期的にかけてくる。
いつもは軽薄そうな男がなれなれしく話しかけてくるのだが、今日は違った。
テレビで見た覚えがあるのだが、頭にヘッドセットをかぶり、愛想良く話しかける、あのカワイイ声だった。
ぼくは一瞬たじろぎ、
「いまはお金がたくさんあるので、いるときはお願いします」
なんて言ってしまった。