お客様から借りた本を読み始めた。村上春樹の「海辺のカフカ」。4年前の本だ。彼の本を読むのは久しぶり。あいかわらず主人公たちは生活感のない、隠喩や直喩をちりばめた奇妙な言葉でしゃべりまくる。しかし、その隠喩や直喩がちょうどテレパシーのように、言葉の理解を省略し、まるで絵を眺めるように情景を伝えてくる。隠喩はイエスキリストが説教する際に好んで用いた手法だ。人を諭す場面でよく使われる。そんなわけで、彼の作品に登場する人物はどいつもこいつも、多かれ少なかれ説教がましい。「海辺のカフカ」では、特に隠喩(メタファー)という言葉が随所に現れ、主要なキーワードのひとつになっている。おかげでぼくは、主人公たちと、執筆中の村上春樹の顔がダブってしょうがなかった。登場人物をふくめ、この作品は僕の(村上春樹の)メタファーなんだぞ、と自ら言い続けてるような気がして。