コーヒーカップ片手に屋上に上がり、ベンチに腰掛けて文庫本を開いた。空は青く、雲一つない。今日が何の日であろうと関係ない世界で、ぼくは温かな日差しを浴びながら本を読む。遠い景色、柔らかな陽光、熱いコーヒー。開いたページの文字を追っていると、どこからか金色の蜂が飛んできて文字の上にとまった。彼は気持ちよさそうに陽光を浴びたまま動かなくなった。やれやれ、そんなところでくつろがないでくれ、ページがめくれないじゃないか。D.H.ロレンスなら、キミを大地からやってきた客と看なし、キミが気持ちよく飛び立つまで辛抱強く待つだろうけどね。と、そんな無駄なことを考えているうちに蜂はどこかに飛んで行った

