無人島の一冊

ある本の中で開高健は、無人島に本を一冊持っていくなら何を持っていくか、という問いに「旧約聖書」と答えていた。ただしそれは純粋に文学的な理由からであって、私は無信仰者である、と断っていた。聖書ではなく旧約聖書と限定してるあたり、ああ、なるほどと思わされる。欧米では昔も今も、無人島に持っていく本といえば、そのトップに聖書があがるようだ。旧約に限ってないようだし、求められているのは文学的な魅力とは別の何かなのかもしれない。日本のオンライン書店が2012年に「無人島に持っていくならこの一冊」という企画で投稿を呼びかけたところ、1位 ONE PIECE、2位 聖書、3位 広辞苑、となったようだ。2位が聖書というのは意外だった。投稿者のコメントには、「極限状態に陥ったらきっと聖書が心の支えになるのでは?クリスチャンじゃないけど」なんて書いてあり、合点がいってなかなかおもしろい。ぼくはといえば、聖書と広辞苑はぜひとも持って行きたい、と思っている。聖書は別格として広辞苑は読んでもおもしろい。ランキングを眺めていて、11位に星の王子さまがランクインしているのに妙に共感を覚え、なんだかほっとした。星の王子さまはほとんど暗記しているので、特に持って行こうとは思わないけど

P.S.

ちょっと気になって、開高健の発言を調べてみたところ、文学的理由から、とは言ってなかった。以下、そのまま書きうつします。

… 現代語訳でない旧約聖書。欧文脈、和文脈、漢文脈の完璧な成果。ただし、私は無信仰者である。人間学として読むのである。すべてはここに言い尽くされている。