鏡の向こうの疲れた男

風呂から上がって鏡に向かい、髪を乾かす。鏡の向こうに疲れた顔の男が立っている。ぼくは男に問いかけた。
お前の存在理由を言ってみろ。お前は何故に在るのか。

答える必要はない。
そう問わずにはいられないぼくこそがぼくなのだ。

インドの古い寺にはこういう格言が書いてあるという。
父を疑え、母を疑え。師を疑え。しかし、疑うおのれを疑うな。