カイバが気持ちよく働くとき

おとといの記事に載せた名前の分からない謎の果物は、思いがけない展開で、その正体が明らかになった。
昨日の午後、常連の某F少年がいつものように店に現われた。ぼくは謎の果物をナイフで切って彼に渡し、
「コレ、知らないよね」
と、言った。ぼくは常連のお客様がいらっしゃるたびに、こうして果物の名前を探っていたのである。
すると彼は果肉をスプーンですくいながら
「名前は分からないけど、去年、ここで食べましたよ」と言った。
ぼくはびっくりした。ぼくにはその記憶がなかったからだ。
「憶えてないんですか? ほら、Mさんからもらって…」
少しずつ記憶が蘇ってきた。そうだった、常連のMさんが自宅の庭に生ったのを持ってきてくださったのだった。ぼくはさっそく、はあぶ工房のMさんに電話してみた。こうして謎の果物は「フェイジョア」という聞きなれない植物の果実であることが判明したのである。F少年に食べさせなければ、たぶん、永遠に謎のままだったに違いない。そう、F少年の海馬は食い物の記憶に関して目覚ましい働きを見せることが改めて立証されたのである。

“カイバが気持ちよく働くとき” への2件の返信

  1. これを書いてて、フト
    1、あの実の形を見て思い出したのか
    2、匂いをかいで思い出したのか
    3、口に入れて思い出したのか
    気になったんだけど。
    いずれにしても、思い出してしまったということは、あの時の記憶は再編集され、変形してしまったんでしょうね。
    惜しい、というか、ちょっと切ない(笑)

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