外は冷たい風が吹いていた。ぼくはヒマを持て余してやってきたようにしか見えないバイク少年と、最近読んだ本の話をしていた。そこに、いかにも悩みを持て余しているといった表情のお客さんがやってきてこう言った。
いま、ある絵描きの個展に行ってきたんだが、そこに展示してあった絵が欲しくなってしまった。どうしよう。買うべきか、買わざるべきか。
これは例えば、ある会合でたまたま出会った女性に一目ぼれをしてしまって、ドライブに誘うかどうか迷うのに似ている。つまりこれは、あなたがとっくに忘れてしまった、いわゆる一つの「恋」