消すことはできないテレビ番組

先日読んだデイヴィッド・イーグルマン (著)「あなたの知らない脳—意識は傍観者である」がおもしろかったので、同著「あなたの脳のはなし」を購入し読みはじめた。読みはじめて間もなく以下に引用した文章にさしかかり、ちょっとうろたえた。わかっていたはずなのに、こうもあっさり言われるとけっこう戸惑う


色は周囲の世界の基本的性質だと考えられている。しかし実際には外部世界に色は存在しない。電磁放射線が物体に当たると、その一部が跳ね返って、私たちの目にとらえられる。私たちは何百万という波長の組み合わせを区別できるが、そのうちどれかが色になるのは、私たちの頭の中だけのことだ。色は波長の解釈であり、内部にしか存在しない。
(中略)
あなたの頭の外の世界は、実際にどう「見える」だろう? 色がないだけでなく、音もない。空気の圧縮と膨張が耳に拾い上げられ、電気信号に変換される。そして脳がその信号を、甘美な音色、あるいはヒューヒューやガタガタやガチャガチャという音として、私たちに示す。現実にはにおいもない。わたしたちの脳の外ににおいというものはない。空気中を漂う分子が鼻の中の受容体と結合し、私たちの脳によってさまざまなにおいとして解釈される。現実世界は豊かな感覚事象にあふれてはいない。そうではなく、私たちの脳が独自の感性で世界を照らし出すのだ。


こうも率直に述べられると、なんだか途方に暮れそうになる。いったい、現実とは何なのか。まぼろしとの違いは何なのか。それに答えてこの章は終わる。以下引用


では、現実とは何なのか?あなたが見るだけで、消すことはできないテレビ番組のようなものだ。ありがたいことに、最高におもしろい番組を放送している。それはあなただけのために編集され、カスタマイズされ、映し出されているのだ。