店を閉め、車に乗り込み、家路を急いだ。夕食は何だろう、そろそろカレーかな。駐車場に車を止めて玄関に向かう。南東の空に円い月が浮かんでいるのが見えた。しかし、その月はこれまで見た月とはずいぶん違っていた。
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体は生物学的には現代人とほとんど同じにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。
これはジェイムズ・P・ホーガンのSF、「星を継ぐもの」の紹介文。数日前にこの本を読み終えてからというもの、月を見るたびに、あのどこかに5万年以上前に死んだ人間の死体が転がっているんじゃないか、と思うようになってしまった。