常連のお客さんがコーヒーの代金に見慣れないお札を差し出された。久しぶりに見る2000円札。お年玉用なのだという。きれいなお札だったので取っておくことにした。ところでこのお札、きれいなのはいいけれど、レジに専用トレーがない上に使い慣れてないこともあって、釣銭で必ず戸惑う。夕方いらした常連のTさんに、ほら、と言って見せると、なにそれ!と目を丸くされた。彼女も2000円札のことなど忘れてしまったようだ。このお札、釣りを間違えそうで怖いんだよね、とぼくが言ったのをきっかけに、それぞれの釣銭失敗談でしばし盛り上がった。お互い気をつけようね~もう年なんだから、とTさんは笑いながらコーヒーを携え、帰っていった。これで終わればよかったのだが、閉店後、レジを締めると3360円余っている。もしかするとだれかに釣銭を渡し忘れたのかもしれない。やれやれ。自己嫌悪に打ちひしがれながらレジのジャーナルを引きずり出し、問題のお客さんの特定を試みる。あった、釣3,360-と打たれた印字が。購入した商品を調べると…そのお客さんはTさんであることが判明した