夏の夜の本

家族三人で夕食を囲んでいると、ふいに息子が、何かおもしろい本はない?などと言い出した。ぼくは大皿に盛られたディナー(カボチャコロッケ)を箸でつかみながら、カラマーゾフの兄弟なんかどうや、夏の夜にぴったりやで。というと、相手はにわかに顔を曇らせ、あ、あれはちょっと、と首を振った。やれやれ、自称読書家、好きな作家は村上春樹、ではなかったのか。まあいい。夏の夜は探偵小説がお勧めだ。と言うわけで、本棚をごそごそやって、ディックフランシスの「興奮」「利腕」「大穴」を取り出した。彼くらいの年齢にはぴったりの探偵小説ではないだろうか。