そのむかしナマロクが流行ったころ、ぼくは大きな電池式の録音機を肩に下げて、波の音や、虫の声を録りにいっていた。自分で録音してきた自然の音をストックして、いつでも聞きたいときに聞く。ソファに深く座り、オーディオ装置の前で目をつむると、ひぐらしの鳴く山奥の風景や、夏の砂浜に寄せては返す波の様子が目の前に忽然と現れた。今思えば、とても優雅な趣味だった。その趣味も、10年前、ときおり家のそばに飛んできていたアカショウビンの声を録音したのを最後に、やめてしまった。今は何か・・・たとえば波の音を録音したい、という気持ちは立ち上がってこない。同じく鳥の声も。数年前から、また写真撮影に懲りだしたが、撮ってみて残念に思うのは、ずいぶんへたくそになってしまったこと。むかし撮った写真には、嫉妬を覚えるほど生々しいものが感じられる。たぶん、撮りたいという欲望が強かったのだろう。翻って今、ぼくが欲しいものはなんだろう。情けないことに、今それが分からない。それが見つかった時、いい写真が撮れるような気がするし、いい音が録れるような気がする。
エルカセットデンスケ
EL-D8
25Hz~22kHz ±3dB(Type-IIデュアド)
ワウ・フラッター 0.04%
332×100×298mm
5.8kg(乾電池含む)
“ぼくの欲しいものはなんですか” への4件の返信
コメントは受け付けていません。
ある放送関係の方が書いておられたのですが,良い機械というのはボタンを押すフィールひとつ優れているのだとか.
機械が所有者に使ってくれとアピールするものなのだそうです.
今は高性能でも機能は簡単ですし,操作はリモコンで多くは本体に触れずとも使えます.
情熱を掻き立てる道具が年々少なくなっているのかも知れませんね.
ああ、それ、よく分かります。使う人の感性にもよりますけど、良い機械には、それをつくった人の美学が自然に反映されていて、それが五感を通して静かに伝わってきます。機械に心はないのですが、優れた機械は機械としてのわきまえを知っているし、まるで全幅の信頼を寄せ得る老練の執事を思わせる風格がありますよね。
私が持っていたデンスケはLカセットじゃなかった。
これは、昭和50年ぐらいの代物ですか……?
スプーンさんの写真はすごいといつも思っています。
比べると、自分の写真は軽いんですよね。
SIGMA50mmDG MACRO を手に入れました。
思いがけず、手に負えねえ……(*^.^*)
調べてみたら昭和53年の代物のようです。これを買うとき、オープンリールのデンスケにするかずいぶん迷ったあげく、新製品、ってことで、こちらを買いました。でも、やっぱりオープンリールにすればよかったと後悔しました(笑)。懐かしい思い出です。
写真は難しいですね。だから一生懸命撮るのかもしれません。それにしても、そろそろ何かが見えてきてもよさそうなものですけどね。
マクロレンズを買ったのですか? SIGMA50mmDG MACRO、これ、もしかするとぼくのと同じものかも。そんなわけで、ぼくも早速レンズをマクロに取り替えて写真を撮りました。今日の記事がそれです。タイムスリップグリコのオマケが机の裏から出てきたので、それを撮ってみました。