だれかが言ってたっけ。しとしとと冷たい雨が降るこんな夜は、部屋を暗くしてブレードランナーを観るのがいい、って。映画ブレードランナーには、レプリカントと呼ばれる人造人間が登場する。彼らは造られた人間なので、過去の記憶がない。だのに彼らはあるはずのない、自分とかかわりのありそうな過去の写真を肌身離さず持ち歩く。写真が彼らの記憶であり、心のふるさとなのだ。
海沿いの食堂で昼食を済ますと、ぼくは少し南にある岬に向かった。
道路を挟む山の頂は垂れこめた暗い雲に呑みこまれて見えない。岬のそばの某複合施設の博物館で「蘇る南薩鉄道の記憶」という催し物をやっていることを、数日前、某ブログで知ったのだった。300円の入場料を払って入館した。
大きなガラスケースに展示された鉄道模型の中には、お気に入りのオレンジの列車があった。ぼくはこのオレンジの列車の写真を持っている。
列車の前に写っている男は、紛れもなくNだ。でも、ぼくにはこの写真を撮った記憶がない。
ガラス越しに模型を眺めていると、係りの若い男の人が、こんな蒸気機関車も走っていたんですよ、と教えてくれた。
ぼくはその蒸気機関車を知っていた。母のアルバムの写真の隅に、小さな蒸気機関車が写っていたからだ。その写真には、女性が並んで写っている。母が女学生だったころ撮った写真だ。ぼくは思う。もしこの古い写真の中にぼくが写っていたとしても、今夜のぼくはそれを疑わないだろうと…。こんな冷たい雨の降る夜だから。
“雨の夜に蘇る記憶” への2件の返信
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[E:dash]売店から直行しました。
写真のNは、紛れもない遺伝子工学の新技術によって生産された人造人間なんですよ[E:shadow][E:mobaq](笑)。
chikako~♪さん、今年も早速のご注文、ありがとうございます。
そういえば写真のNは、ふつうの人間なら休みながら仕事をするのに、ぶっ通しで仕事をし続けても平然としています。いわば仕事マシーン。ぼくは彼をこう呼んでいます。
仕事男。
http://coffee.synapse-blog.jp/life/2007/12/post_7565.html