いったい、そんなホテルがあるのだろうか。
駅を出たぼくはタクシーに乗り込み、運転手にこう告げた。
「トナカイホテル」
運転手はルームミラーでぼくを確かめると、軽くうなずき、車を発進させた。ほっとした。どうやらこの町で間違いないようだ。運転手は50がらみの陰気な男で、耳から歯ブラシのような剛毛が伸びている。長い年月、寒い土地に住んでいると、こんな耳になるのだろうか。たしかに、ここはぼくが住んでいる町よりずいぶん寒い。ぼくはしばらく窓を流れる風景を眺めていたが、ふと、突然この身に降りかかった異常な事件を確かめようと思い、ボストンバッグを引き寄せた。チャックを開け、紙箱を取り出し、ふたを開ける。なんの変哲もないクリスマスの飾り物。よく珈琲屋のカウンターなどに置かれているアレだ。そう、事の発端は、そこに飾り付けてある妙なトナカイの人形だった。
“トナカイをめぐる冒険” への4件の返信
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もっと読みたいです。
続きはあるんでしょうか。
え? 読みたいんですか?
うれしいな~
じゃあ、続きを書いちゃいますね。ちょっと待っててください。
333333333333333333333333333333333333さんの国へ?
プレゼントを用意するときに手伝おうとしながらドジばかりする北極グマさんとはあいませんでしたか?(笑)
そうか、もしかするとタクシーの行き先は
333333333333333333333333333333333333さんの国なのかもしれないですね。となると、ぼくも北極グマさんといっしょにプレゼントの梱包を手伝わされるかもしれないな。ラッピング、苦手なんですよねー、あ~、クマったなぁ。