terminal

お昼過ぎ、魔女が来た。それはぼくが密かに「魔女」と呼んでいるお客様のことであって、そのことを彼女は知らない。彼女の世界観は独特で一般的ではない。彼女には人間以外の親しい友達がいて、たとえばその友達の一人は、ある特定の場所に生えている一本の樹木だ。彼女はその樹木のことを、あの人がね、とか、○○ちゃんは、というふうに、ふつうに会話に登場させるので、たぶん、だれだって始めのうちはキツネにつままれたような変な感じになる。ぼくもそうだったのだけど、今は慣れた。今ではぼくも彼女を通して、その樹木を感じることができる。彼女が、草木、花のことを語りだすと、変な言い方だけど彼女の周りが渦を巻くような感じになり、渦の腕がぼくの方に伸びて絡んでくる。その時の彼女の目はちょっと恐い。ところで、ぼくは時々本気で思うのだけど、女というのは、もともと魔女であって、人間のふりをしてるだけじゃないの?