夕焼けこやけの赤とんぼ、負われて見たのはいつの日か。
たぶん、ほとんどの方がご存じないと思うのですが、鹿児島市のゴミ収集車は、スピーカーで「あかとんぼ」のメロディーを流しながら、路傍に置かれたゴミバケツのゴミを収集してたんです。何十年か前のはなしです。ぼくのおじいさんは脳溢血で亡くなったんですが、窓の外から流れてきたこのメロディーに、「いい歌だなあ」とつぶやいて息を引き取ったそうです。
この、おじいさんの話は、たぶん伯母から聞いたはずなんですが、今思えば「いい歌だなあ」ではなく、「空が真っ赤だよ」ではなかったのかな、という気がします。ぼくがまだ幼かったので、わかりやすく話して聞かせたのではないかと思うわけです。今わの際の朦朧とした意識に映っていたのは、遠い昔に背負われて見た、赤とんぼの舞う真っ赤な夕焼けじゃなかったかな、と思うのです。
高校生の頃、叔母が2月に亡くなりました。
その年の冬はよく雪が降りました。
叔母は見てるかなと思いながら
教室から降りしきる雪を私も眺めてました。
今思うと、その最後の雪を眺めながら叔母はどんな気持ちでいたのだろと少し切なくなります。
最後に映る風景、それが心に安らぎを齎すものだといいですね。
ぼくも、いつか必ずそうなるわけですが、来たところへ帰っていくように感じるのではないかと想像します。
溢れくる懐かしさに包まれる体験になるのではないかと。