きょうは啓蟄。冬のあいだ眠っていた虫たちが続々と穴から這い出してくるという、不気味な日。虫が嫌いな人には忌まわしい日だろうけど、虫好きのぼくには、何かいーことがありそうな、ミョーにワクワクするご機嫌な日
Mothra_02

人は賞賛を欲する動物である

090304_01
わが家の玄関の照明は、人が入ってくると自動的に点灯する。赤外線センサーが人を感知してスイッチを入れてくれるからだが、このセンサーが壊れた。家を建てて10年以上経つ。電気製品は、だいたい10年で壊れることになっている。
家人が、「直せる?」と聞くので、「どうかな」と言って、ぼくは器具を取り外し、分解し始めた。複雑な機械を分解するときは、その様子をビデオカメラで録画しながら作業を進めるのだが、単純そうな機械なので、深く考えず、ネジを片っ端から外していって基盤を露出させた。予想したとおり、リレーに問題があった。久しぶりに半田ごてを手にし、修理した。器具を元通り結線し、天井に取り付ける。スイッチオン。やったー、無事点灯。ぼくはとてもうれしかった。しかし。
直ったことに、だれも感動しない。
「すごーーーーい!」とか、
「ステキ!あなたって、何でもできるのね」とか、
「修理代が浮いたから、今夜はご馳走よ」とか・・・
理由はわかる。ぼくは、機械が壊れると、ほとんど自分で直してしまう。直せてあたりまえ、なのだ。
あたりまえに感動は無いのである。

パーフェクト・ブルー

090303_01
田口ランディのノンフィクション、「パピヨン」は、彼女がチベットに着いて間もなく高山病にかかった、というくだりから始まる。
酸欠状態のため思考ができない。言葉が消えていく。なにを考えようとしてもとりとめがなくなる。しまいには考えることに疲れてしまい、考えることを放棄した。
無だった・・・・・。いかなる思考も浮かんでこない。
  中略
とにかく空気が薄いのでなんの考えも浮かばない。でも目と耳はクリアだった。とても気持ちがよかった。チベットの空は青い。青という色に街が抱かれている。私も抱かれている。青が世界を満たしている。この青は呼びかけてくる色だ。青が私を呼んでいる。どこか遠くから、じっと誰かが見ている。もちろんそれも言葉にしたのは後のこと。なにも浮かばない。ただ空が見ている。いや、これも後づけだ。「空が見ている」ということも思わない。言葉は消えていた。
  中略
もう、瞑想の状態に戻ることはできなかった。あの、三昧の状態は、一瞬で終わってしまったのだ。何度も努力したけれど同じ状態にはならなかった。たぶんあれは、高山病がもたらした奇跡だったんだろう。
これを読んで、ぼくもまったく同じ体験をしたことを思い出した。数年前の夏、ぼくは海底に落としたものを拾うために長時間潜り続けて酸欠状態に陥り、ひどい吐き気に襲われた。砂浜で休んでいると少し気分が良くなり、波打ち際をふらふら歩き出した。その時の空の青と海の青が、色というのではなく、強い意志としてぼくに直接語りかけてきてぼくを圧倒した。語りかけてきたがそれは言葉ではなかった。ランディさんが描いているのとまったく同じことが起こった。以来、ぼくの中で何かが大きく変ってしまったような気がする。
その日のことをブログに記しているのだけど、さっき読んでみたら「限りなく理想的なブルー」という題になっていた。あの青をもう一度体験したいとは思うのだけど、だからといって酸欠状態を再現しようとは思わないし。

サルの握手

090302_03
ひさしぶりに海に来て、だれもいない波打ち際を歩いた。
090302_01
どこまでもどこまでも歩いていると、水際にきれいな白い鳥がいた。
写真を撮ろうと思って、そうっと近づいていった。
でも飛んでいった。
090302_02
数日前の、某ブログの記事を思い出した。
  ———- ここから ———-
私は自分が若い日に傾倒した哲人の言葉を思い出していた。正確な言葉ではないが、子どもの教育にも打ち込んだその哲人は、子どもから、「わたしはリスが好きなのに、わたしが近づくとリスは逃げてしまいます。どうしらたいいのですか」と問われた。彼の答えは意外なものだった。そしてその答えは、私の心にずっと残った。彼の正確な言葉は忘れたが、こんなふうに答えた。「リスがきみに安心感が持てるように、毎日リスのいる木の下でじっとしていなさい。何日も何日も。」 その奇妙な答えは彼自身が自然のなかの暮らしで実践していたものだった。大樹の下で禅定ともなく静かに日々座って、リスや山の動物たちが彼を恐れなくなるまで慣れさせ、そしてやがて彼の体にリスが乗り駆け回るようまでなった。猿がやってきて握手を求めたともあった。
 猿の握手。私はそんなバカなと思ったが、別途動物学の本で、仕込んだわけでもなく自然の猿にそういう習性があるのを知った。
090302_04

明日は晴れらしいね

090228_01
金星はめったに晴れることがないから、どの家もコケにすっぽり覆われているんだ。もちろん、ぼくの家だってそうさ。だから、だれだって自分の家が何色だったかすぐに忘れてしまう。そこで年に数回、屋根や壁にへばりついたコケをコケカキ機という専用の器具で掻き落すんだが、これを怠けると、コケの重圧で家がつぶれることがある。信じられるかい? でも、実際、本当に大変なんだ。と、彼は言った。

三分咲き

090227_01
暖かい日が続いたせいで、駐車場の桃が一気に三分咲きとなった。缶ビールでも開けて花見と洒落込みたいところだが、あいにく雨が降っている。それにしてもいいね、ピンクの花は。とても色っぽい。

ひとりの部屋

090226_01
時々たずねられる。
ひとりで仕事をしていて退屈しませんか?
ぜんぜん、と、ぼくは答える。
今から10年前、脱サラして、さて何をしようか、と考えたとき、まず、
人に使われたくない。人を使いたくない。
と思った。
ええよ、ひとりは。気楽で。

おととい傘の中の二人

090222_02
おととい、雨の中を傘をさして撮った花が、今日は無残に散っていた。分かってはいたのだけど、なんともいえず、さみしかった。
きみは去り、残されるぼく。

某営業マン

090224_01
昼すぎ、某社の営業マンが集金に来た。
「なんだ、もう来たのか」
ぼくが眉をひそめると、営業マンはヘヘヘ、と頭をかきながら
「あ、そういえば、この前連れてきた会社の女の子が、マスターのことを、メッチャカッコイイ、って言ってましたよ」
と言った。
「え?ほんとに?」
ぼくはその女の子がどんな顔をしていたか必死に思い出そうとした。
「ほんとうですよ。ではまた」
営業マンはバッグにお金をしまうとさっさと帰っていった。