
手が荒れた時にメンソレータムを塗るようになった。以前は手が荒れても放っておいたのだけど、昨年暮れ、指の怪我に塗るついでに手全体に擦り込んだところ、手荒れがけっこう治まったので、以来、マメに塗るようになった。メンソレータムは怪我をしたときに塗る薬だと思っていた。子供のころ、ぼくは外で遊んで毎日のように怪我をしていた。そのころの子供は皆そうだったと思う。怪我をして帰ると、まず、傷口をオキシフルで消毒し、その上にメンソレータムを塗りつけていた。それが日課だった。自分でやっていたので、長く使っているうちに薬の中に血が混じり、容器の中は赤い絵の具のようになっていった。今でも容器をのぞくたびに、あの血まみれのドロドロを思い出す。
最後のチキンライス
今日の晩飯はスパゲティーのミートソースだった。
わが家のミートソースにはトマトがたっぷり入っている。
食べ終わった後、鍋に残った赤いミートソースを見て、ふと、
これでチキンライスを作ったらうまいだろうな、
と思った。が、そこで急に気になりだした。
最後にチキンライスを食べたのはいつだっただろう。
去年は食べていない。ずいぶん長く食べてない気がする。
で、家人に、「最後にチキンライスを作ったのはいつ?」
と、聞いてみた。すると、
「私はチキンライスなんて作ったことがない」
と、断言した。
ぼくが最後に食べたチキンライスは、だれが作ったんだろう。
アンケートを作ってみましたので、良かったら回答をお願いします。
☆あなたはチキンライスをどれくらい食べてますか?
太陽のかけら
お花畑を歩く
温泉たまご日和
無意識過剰
ぼくの周囲には、いわゆる天然な人が多いように思う。
ぼくがそれを好むから自然とそうなるのかもしれない。
自分にないものを求めているのだろうか。
人をひきつける力。
カラマーゾフの兄弟に出てくるアリョーシャ、リザヴェータ。
そして頭のいい、ロジカルなイワン。
ドストエフスキーが言いたかったことは何だろうね。
星空
憂える78
窓の外も暗くなって、間もなく閉店という時間に父がやってきた。なんだろう、と思ったら、コーヒーを一杯飲ましてくれ、という。なんでも固いものが食えなくて、コーヒーや牛乳、そして豆腐みたいな軟らかいものばかり食べているのだという。いわれてみれば父も78、固いものを食べるのに難儀する年齢なのだ。
熱いコーヒーを一口すすると父は「実はこのまえな」と、切り出した。
「天文館のカラオケバーに行ったとき、酒を飲みすぎて気分が悪くなってな」
父は最近、年寄りばかり集まる妙なカラオケバーに入り浸っているのだった。
「それで吐きたくなって、トイレで吐いたら、入れ歯も流れちまった」
くだらねえ。
ぼくは情けなくなった。固いものが食えない理由は入れ歯だったのだ。しかし本人はまじめ腐った顔でこう続けた。
「カラオケに行っても気の合うやつなんかいない、友達はみんな死んじまって、遊ぶ相手もいなくなった。元気なのはイナモリだけだ」
稲盛さんは父が高校の時の同級生。父の友人にはユニークな人が多かったが、ここ数年のうちにほとんど亡くなってしまった。ぼくも、稲盛さんの元気な声を聞くとほっとする。父が元気がない時など、稲盛さんが活躍している話をすると、まるで自分のことのように喜んで元気になる。稲盛さんには、ずっと元気でいて欲しいと思う。

















