海辺を歩く

1002_22_01
海のそばの食堂に行った。ぼくは波打ち際をぶらぶら歩いた。何もなかった。いいアイデアが浮かんだりすることもなかった。はらが減ったので食堂に行って窓際の席に座り、安いほうの寿司定食をたのんだ。メニューに、ワサビの量を調整できます、とあったので、ウェイターに、ワサビを利かせてくれ、と言った。ワサビの利いた寿司を食べていると、後ろの席に座っている老年夫婦の会話が聞こえてきた。弱々しい男の声が「せっかくだからコーヒーでも頼もうか?」と言いかけたが、言い終わらぬうちに「お茶があるでしょうが」と女の声がかぶさった。ぼくはつらい気分になった。

日曜日の歌

店ではジャズかクラシックをかけていることが多い。でも、日曜日にはなぜか、歌謡曲など、日本の歌をよくかける。理由は不明だ。日曜になると、わけもなく日本語の歌が聞きたくなる。ただし平成の歌はかけない。すべて昭和。いいたくはないけど、昭和は良かったなぁ。
1002_21_01
さっき机の裏を掃除してたら、未開封のグリコのオマケが出てきた。

メガネ

新しく作ったメガネを今日かけてみた。みちがえるほど世界が明るい。なんのことはない、今までかけてたメガネには色が入っていたのだ。先入観や感情にとらわれて人を見ることを、色メガネで見る、という。でも人は先入観なしで物を見ることはできない。知らないものを認めることは不可能なのだ。こんな歌がある。「おさなごの、しだいしだいに知恵づきて、仏に遠くなるぞ悲しき」おそらく、多くの人は勉学を積むことでモノが見えるようになると信じている。でも、その努力は目的とは裏腹に色メガネを濃くする方向に働くかもしれない。

ぼくの欲しいものはなんですか

そのむかしナマロクが流行ったころ、ぼくは大きな電池式の録音機を肩に下げて、波の音や、虫の声を録りにいっていた。自分で録音してきた自然の音をストックして、いつでも聞きたいときに聞く。ソファに深く座り、オーディオ装置の前で目をつむると、ひぐらしの鳴く山奥の風景や、夏の砂浜に寄せては返す波の様子が目の前に忽然と現れた。今思えば、とても優雅な趣味だった。その趣味も、10年前、ときおり家のそばに飛んできていたアカショウビンの声を録音したのを最後に、やめてしまった。今は何か・・・たとえば波の音を録音したい、という気持ちは立ち上がってこない。同じく鳥の声も。数年前から、また写真撮影に懲りだしたが、撮ってみて残念に思うのは、ずいぶんへたくそになってしまったこと。むかし撮った写真には、嫉妬を覚えるほど生々しいものが感じられる。たぶん、撮りたいという欲望が強かったのだろう。翻って今、ぼくが欲しいものはなんだろう。情けないことに、今それが分からない。それが見つかった時、いい写真が撮れるような気がするし、いい音が録れるような気がする。
1002_19_01
エルカセットデンスケ
EL-D8
25Hz~22kHz ±3dB(Type-IIデュアド)
ワウ・フラッター 0.04%
332×100×298mm
5.8kg(乾電池含む)

色っぽい男たち

昨夜はGattacaというSF映画を借りてきて見た。舞台は近未来。主要キャストはイーサン・ホーク 、ジュード・ロウ、ローレン・ディーン、ユマ・サーマン。切ない内容で、ぼく好みだったが、なによりこのキャストたちの雰囲気がよかった。清潔な色っぽさというか。とくにジュード・ロウ。ぼくがもっと若かったら、あのたたずまいを勉強しただろうな。今夜は、今からKnowingという映画を見ます。主演、ニコラスケイジ。この人も色っぽいよね、男から見ても。

街に出る気分

ずいぶん前の話だけど、ちょっといい服や靴、プレゼントの品などを買いに出かけるときは、余所行き顔というか、少し改まった気分で「街」に出かけたものだ。街、とは、天文館のこと。今日は休日。いつもならドライブに出かけるところだが、天気が悪かったので買い物に行くことにした。来月ちょっと旅行をするので、新しい服と靴、そしてメガネを買うつもり。行き先はイオン。ぼくの住む団地から車で15分のところにある。ぼくはめったに買い物に行かない。そこで今日は街に出かける際の、あの、ちょっとめかしこんだ気分を久しぶりに味わおうと思ったのだけど、なぜかサッパリそういう気分にならなかった。

バレンタイン前夜

1002_13_01
閉店間際にやってきた某R32独身男とバレンタインデーチョコについての哲学的考察を行った。当然ながら議論は軽薄な中高生レベルではない。どこか陰のある、心にいくつかの傷を隠し持つハードボイルドタッチ男レベルのものであった。たとえば、本命チョコはゴディバであってはならない、という説にはぼくも深く同意した。議論は次第に熱を帯びはじめたが、実際問題として明日、本命チョコをもらえる可能性は限りなくゼロに等しい状況だということで議論はお開きになった。