雲の中
夜のドライブ
夜、ドライブを兼ねて、郵便物を10キロ離れた郵便局まで届けに行った。途中、踏切の近くに来た時、急に強い胸騒ぎがした。でも、踏切を渡り、しばらく走ると忘れてしまった。郵便局の近くに車を止め、局内のポストに投函した。帰り道、さっきの踏切の手前のカーブで、闇の向こうに信号灯を振り回している人影を認めた。右側の車線をのろのろ走った。路面が油で濡れ、その先にパトカーが止まっていた
スイカの漬物
風呂から上がってスイカを食べ、その皮で漬物を作った。おととい作ったスイカの漬物が結構うまかったので、また作った。作るとき、適当に切った皮に塩を振って軽く揉むのだけど、その時の匂いが、とても懐かしかった。昭和の匂いだった
リブート
ぼくはニンジンが嫌いだ。でも、年に数回、ニンジンが無性に食べたくなる。レバーもそうだ。特に好きでもないのに、あのガス臭い味が切に恋しくなることがある。映画や本にもそういう傾向がある。映画や本が好きなんですね、と、よく人に言われるのだけど、ぼくは映画はあまり見ないし、本もほとんど読まない。ただ、ニンジンと同じで、ある一定の期間が経ったころ、無性に本が読みたくなり、また映画が見たくなる。そしてその期間が過ぎると、本も映画も見ない。ぼくにとって映画や本は娯楽ではない。強いて近いイメージを挙げるなら、Windowsのシステムツール、デフラグ。データの断片化を解消し、データの読み取りを速くする。映画や本、つまり外部の物語は、ぼくの中で断片化されて見えにくくなったエピソードや言葉をうまくつなぎ合わせて、自分で読み取れる物語に再構築してくれる、あるいは、その手助けをしてくれる。これは以前このブログで取り上げたオープンダイアローグの手法とよく似ている。数日前、図書館から本を借りた。村上春樹の短編集を2冊とコロンビアの作家が書いた百年の孤独。村上春樹が外せないのは、彼の物語が、どういうわけか、断片化の解消と物語の再構築に卓効をあらわすから。例えば、今回借りた本の主人公がこんなことを言う。
「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、かたちのないものを選べ。それが僕のルールです」
村上春樹「東京奇譚集」偶然の旅人
十分にわかってはいても、行動につながる言葉になって出てこなかったぼくの考えが、また、そのせいで前に進まなくなっていたぼくの物語が、この代弁者の言葉によって再び動き始める
雨の植物園
雨が降っている。こんな日は雨戸を閉め、部屋を暗くして映画なんか見るのがいい。でも、どうしても今日はドライブに出かけなくてはならなかった。行くところがあるからではなく、車をどこかに走らせなくてはいけない。そうしないと、必ず後で後悔することになる
車は半島を貫く山脈の稜線上を走りつづけ、怪獣池を半周し、某火山の麓にある植物園に到着した。激しくはないが、小降りでもない雨がホワイトノイズのように降り続いていた
傘をさして園内を歩く。傘の真ん中に穴が開いていて、そこから雨が落ちてくる。先日、傘の骨が折れたので修理したのだけど、その時に開いたらしい
200円のビニール傘を修理して使う人はあまりいないかもしれない。修理したといっても、なんとか使える程度になっただけで、骨はいくつか外れたまま。踏みつけてへこんだ洗面器みたいな有様だ
こんな傘が似合うのは俺くらいかも。でも、自分で修理した傘をさして雨の中を歩くのは愉快だ
雨の日に植物園にやってくる人はいないだろう、と思って歩いていたが、どこにも変わった人はいるもので、一組の変なカップルと一人のマスクをした女性とすれ違った
静かな朝が好きなのです
キツツキが毎朝やって来て、家の近くの木をつつくようになった。はじめのうちは珍しさもあって楽しんでいたのだが、だんだんうるさくなってきた。朝早くから、近くの木をマシンガンのように叩きまくる。人がまだ寝ていようが、おかまいなしだ
dance dance dance
珈琲豆を焼き終わって、ほっと一息。コーヒーを淹れ、BGMを先日ネットで買った古いアルバムに切り替える。20代前半、繰り返し聞いたビートの効いた音楽。リズムに反応して思わず体が動き出す。ディスコに通っていたあのころが懐かしい。サラリーマンだったころ、パートのオバさんやバアさんたちを引き連れてマハラジャに行ったことがあった。彼女らはグラスに注がれたピンクやブルーの甘い酒を好奇心の赴くまま手当たり次第試していたが、ぼくが目を離したすきにお立ち台によじ登り、それぞれ思い思いの振りでくねくね踊り始めた。本来そこはスラリとした鑑賞系の美女がスポットを浴びて踊るところ。スモークが焚かれ、ミラーボールは相変らず回っていたが、ぼくはすっかり酔いがさめてしまった。彼女らは大変喜んでいたが、店を出たころから次第に青ざめ、何人かは道路にしゃがんでゲーゲー吐き始めた。またとない忘れられない夜になった



















