時々ネジを巻かないと動けなくなる。そう思い込んでいるからそうなるのかもしれない。でも、寒い日が続いた後など、ブリキのおもちゃみたいに動けなくなって途方に暮れてしまう。ぼくはたいてい、月曜日にネジを巻く。しかし問題は、自分の力ではネジを巻けない、ということ。やさしい人の言葉、波の音、熱いコーヒー、遠くから吹いてくる風、魚フライ、そんなものが気ままにぼくのネジを巻く
もうねます
bonbon
ラーメンを食べて雪が舞う海をみた
砂浜は寒かった
上を向いて歩こう
夜、ウォーキングに出るとき、カメラは持参しない。もし職務質問にあったら、めんどうな会話になりそうだから。でも今夜は月食。月食が始まる時刻とウォーキングの時間が重なってしまった。夜空は雲に覆われていたが、雲の切れ間から顔をのぞかせてくれるかもしれない
そういうわけで、ポケットに小さなコンデジを入れてウォーキングに出た。万が一、職務質問にあっても「月食を撮ろうと思って」と言えば済むような気がした。折り返し点の公園を歩いていた時、時計の上に欠けた月が顔を出した。あわててカメラを出し、シャッターを切ったが遅かった。月は隠れてしまった
雲間から月が出るのを待ったが、出てこなかった
しばらく歩いていると、雲が薄くなってきたらしく、時々月が見え始めた
雲が切れ、あちこちで星が瞬き始めた。遊歩道の脇にあった遊具に肘をのせてカメラを固定し、ズームを望遠にして何枚かシャッターを切った。幻想的な光景だった
ヒーローになれなかった
朝、空港に人を迎えに行った後、山を越え、海の近くの食堂で魚フライを食べた。砂浜をぶらぶら歩きたかったのだけど、風が冷たかったのでやめた。家に帰りついたのは3時過ぎだった。まだ明るかったけどウォーキングに出かけた。遊歩道をしばらく歩いていくと、大きな木に小学生が群がって騒いでいた。見上げると、木の高いところにカバンがぶら下がっている。だれかが放り上げたのが枝に引っかかったらしい。小学生の一人が長い棒を持っていたので、貸してみろ、と、それをひったくり、背伸びをしながら棒の先でカバンを突っつくのだが、もうちょっとのところでうまくいかない。カバンが枝から外れそうになるたびに歓声が上がる。カバンが取れれば、ぼくは文句なくヒーローだ。だが、結局カバンは取れなかった。ぼくは棒を小学生に返し、カバンのぶら下がった木とその周囲にアリのように群がっている小学生たちを後にした
そして371日
青い月夜
夕食後、いつものようにウォーキングに出た。いや、いつものようにではない。ポケットにウォークマン、耳にイヤホンという出立ちだ。遊歩道に月の光がさらさら降り注いでいた。夜遅いせいか歩いている人はいない。奇妙なことに、馴染んだ曲が、いつもと違って聞こえる。時空を超えて聞こえてくる、とでもいおうか・・・ふと青春時代に聞いた曲が流れてきた。ぼくは瞬く間に時間を遡り、友人たちと無心に遊んでいるころに戻っていた。めまいがして立ち止まった。涙が出そうになった
















