青い月夜

夕食後、いつものようにウォーキングに出た。いや、いつものようにではない。ポケットにウォークマン、耳にイヤホンという出立ちだ。遊歩道に月の光がさらさら降り注いでいた。夜遅いせいか歩いている人はいない。奇妙なことに、馴染んだ曲が、いつもと違って聞こえる。時空を超えて聞こえてくる、とでもいおうか・・・ふと青春時代に聞いた曲が流れてきた。ぼくは瞬く間に時間を遡り、友人たちと無心に遊んでいるころに戻っていた。めまいがして立ち止まった。涙が出そうになった

MTで行こう

いつかまたマニュアルシフトの車に乗るつもりでいたのだけど、もう無理かもしれないな。午後いらした某ジャズ喫茶のマスターも、そのあとやってきたバイク少年も、乗ってる車はマニュアルシフト。ジャズ喫茶のマスターはスポーツ走行時、ヒールアンドトゥでシフトダウンしてるんだそうだ。好きだねー。車もそうだけど、自分の物語を本気でドライブするならマニュアルシフトを選ばなくちゃ、かな

カメラをさげて

寺田寅彦の随筆に、カメラをさげて、というのがあって、こんな出だしで始まる。「このごろ時々写真機をさげて新東京風景断片の採集に出かける。技術の未熟なために失敗ばかり多くて獲物ははなはだ少ない。しかし写真をとろうという気で町を歩いていると、今までは少しも気のつかずにいたいろいろの現象や事実が急に目に立って見えて来る。つまり写真機を持って歩くのは、生来持ち合わせている二つの目のほかに、もう一つ別な新しい目を持って歩くということになるのである。」

昨日、駅ビルで昼食を食べた後、近くの古い商店街をぶらぶら歩いた。その時カメラは持っていなかったが、いつもの癖で、カメラを通した風景を同時に見ていた。昭和風情の古い喫茶店に入り、熱いコーヒーを注文した。暖房が効いてて心地よかった。なかなかいい音でジャズが流れていた。ぼくはコーヒーを一口飲んだ後、仮想のカメラを使って何枚も写真を撮った

電気犬の夢

夕食後、いつものようにウォーキングに出た。ふつう9時前に家を出る。夜が更けているせいか、歩いている人はめったにいない。たまに犬を散歩させている人とすれ違うくらい。夜、一人で歩くのはなんだか寂しい。うちにも犬がいたら連れて歩くのに、と思う。でも、途中でウ〇コしたらめんどうだな、と、考え直す。そこでひらめいた。ソニーが犬のロボットを売り出してるけど、あれならウ〇コで煩うこともない。そう遠くない未来、散歩用ロボット犬が発売されるだろうから、安かったら買うことにしよう、なんて思いつつ、この回想、ディックの近未来小説、アンドロイドは電気羊の夢を見るか?の冒頭の逆バージョンだな、と思いあたって、時代は既にSFが描いていた近未来の入り口に差し掛かっているのかもしれない、という気がしたのだった

火球

夕食は鍋だった。ブタのしゃぶしゃぶ。食べ過ぎておなかが痛くなったけど、強力わかもとを9粒飲んで、いつものようにウォーキングに出た。時計は9時を回っていた。約4キロ歩き、家の近くの公園の遊具で懸垂をしていたら、夜空を真っ赤な火の玉が東に飛んで行った。どこかに落ちて、大きな音がするだろうと思い、しばらく耳を澄ましたが、何も聞こえなかった。9時50分頃だったと思う

海の見える丘

風もなく、穏やかに晴れていた。コーヒーをポットに詰めて南に走った。南シナ海が見える丘に上り、草原に寝そべってコーヒーを飲みながら日向ぼっこをしよう、という計画だった。しかし、南に来たのに、山道はかなり雪が積もっていて危ない感じだったし、草原も融けた雪で濡れていた

海に面したレストランで昼食にした

テーブルに敷かれた紙の文字を指し、「海の中には母がいる。そして母の中に海がある」という誰かの詩をヨッパライ某に紹介したところ、珍しくずいぶん興味を示してくれた

空が青い。いつまでも見ていたら、目が青く染まりそうなくらい

美術館の屋上でコーヒーを飲んだ

峠で運転を代わり、山道を歩いて帰った

A LONG VACATION 7日目

冬休みも今日でおわり。休日中に読むつもりで年末に購入した本。まだ半分も読めてない。休み最後の日くらい、自由に使いたいのだけど、明日からの仕事の準備で店に出勤しなきゃいけなかった。写真の本は、When breath becomes air 邦題「いま、希望を語ろう」で、全米でベストセラーを続けているノンフィクション。サブタイトルは、末期がんの若き医師が家族と見つけた「生きる意味」。さて、もし誰かがにっこり笑って「あなたにとって生きる意味とはなんですか」と聞いてきたら、あなたはどう答えるだろう。訳者あとがきにこうある。

第二部の冒頭には、モンテーニュの「エセー」からの引用  人に死ぬことを教えることは生きることを教えることであろう  があるが、彼はまさしく、死にゆく自分について書くことで、私たちに生きることを教えてくれたのだ

A LONG VACATION 6日目

天気が良かったので、ベッドシーツと布団カバーをはがして洗濯した。朝日を浴びながら洗濯物を干していると、なんだか幸せな気分になった。店の大掃除が午前中で終了したので、ドライブに出かけた

あの日、ぼくと家族はこの堤防に座って海を見つめていた。だれも口をきかなかった。あれから18年経った

数組の家族が凧を上げていた。ぼくもその中の一人だったころがある。遠いむかしのことだ

いつものハーブ園で遅い昼食にした。デザートはハイビスカスシャーベット。客はぼく一人だった

日が沈むころ、海に寄ってみた。どういうわけか若いカップルがたくさんいて、遊歩道沿いの「幸せの鐘」を楽しそうに打ち鳴らしていた

A LONG VACATION 5日目

そんなわけで大掃除は今日も続く。昨日、店の掃除が終わらなかったので、朝から店に引きこもって必死に掃除を続けた。が、それにしても天気が良すぎる。雲一つない。やはり今日はドライブに出かけよう。掃除は明日だ~!でもその前に車を洗わなきゃ。カーシャンプーを使い、車を泡だらけにしてゴシゴシ洗う。水滴を拭き終わって時計を見るともう2時半。エンジンをかけ、窓を全開にして海に向かう

外気温10度。暖房を効かせ、窓を全開にして走る。音楽はウイングス。いつもの店で初ソフト

丘に上る。まだ遊び始めたばかりなのに、太陽は西に大きく傾いている

信じられないくらい長いオレの足

むかしよく遊びに行っていた、今は無き、あのレストランの近くまで走った