多重人格

ちょっと古いけど、ダニエルキースの「24人のビリーミリガン」を読んでいる。
10年くらい前にヒットした、ビリーミリガンという実在する多重人格者をレポートしたノンフィクション。
読んでて気になったことがある。
ひょっとすると、ぼくも多重人格者なのではないか、ということだ。
なぜなら、タマに記憶の空白時間が生じることがあり、その時間に何をしていたか思い出せないからである。
もしや別の人格が起きだして、ナニかよろしくないことをしているのではあるまいか。
それとも単なるボケか。

子供電話相談室

午前9時、某国営放送のラジオで子供電話相談室というのをやっている。
当然だが、この番組内では浮気やストーカーの相談はない。
子供向けの番組なんだろうけど、聞いていると、とてもおもしろい。
無邪気さゆえに虚を衝いてくる質問がおもしろいわけだが、今回は、たった4歳の子供が、電話向こうの老先生と淀むことなく渡り合い、あげく必要な回答を得たことにぼくは快哉の声を上げたくなった。いるんだよな~こういう子供が。
たどたどしい幼児の声と年寄りの枯れた声がしっかりかみ合いながら進行する珍妙さ。ひさしぶりにラジオで楽しい思いをした。

スティーヴン・キングな昼下がり

豆を焼き終わった後、暇だったのでノートパソコンでスティーヴン・キング原作のスリラー映画を観ていた。
もうお昼だというのに、お客様はだれもいらっしゃらない。ま、こういう日もあるさ。
仕入先のカメラマンI氏とその連れがやって来た。ぼくはDVDを止め、彼らにコーヒーを飲ませてあげた。
彼らが帰ったので再び映画を観始めた。
だれもいらっしゃらない。ゼロである。そこにカメラマンI氏が一人で戻ってきた。
ぼくは再び映画を止めて彼の相手をした。
彼と話していると、いつの間にか3時になろうとしている。いまだにゼロのままである。
これは変だ。明らかにおかしい。昨日はあんなに多かったお客様が今日は一人もいらっしゃらない。
開店以来、こんな日は一日もなかった。
3時を過ぎるとI氏は帰っていった。ぼくもスティーヴン・キングの映画を観るのをやめて、パソコンを閉じた。
とたん、電話が鳴り出した。予約注文の電話だ。ひっきりなしにかかってくる。
お客様も次々にいらっしゃる。どうなっているんだ。思わずほっぺをつまんでしまった。
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その店には入り口がなかった。
訪れた客は店の前を行きつ戻りつしたあげく、結局あきらめて踵を返すしかない…
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ぼくがスティーヴン・キングだったらこう書くな。

たたみ

夕方、あのAさんがやってきた。
ほかにお客様はだれもいなかった。
ぼくはとても眠かった。
「なにか試飲させて」Aさんは言った。
ぼくはいつものようにコーヒーをたてて、彼の前に置いた。
しかし、猛烈に眠い。
Aさんも一応お客さまだから、ぼくは眠るわけにはいかないのだった。
と、そこでぼくはいいことを思いついた。
「ラジオ体操してもいい?」
「いいよ」
ぼくは携帯に入ってるラジオ体操第一を呼び出し、それにあわせて体操を始めた。
「うまいね」Aさんはコーヒーをすすりながら言った。
ラジオ体操はサラリーマンだった頃、朝礼とともに日課だったのである。
体操が終わると、今度はAさんが「もっと効果的なのを教えてあげる」
といって、ヨガを始めた。
床に座って足を組み、両手を合わせて目を瞑ると独特の呼吸を始めた。
なんか、おもしろそうである。
しかし、ズボンが汚れるのが難点だな、とぼくは思った。
そこでぼくはタタミを一枚買い、普段は壁に立てかけておいて、ヒマなときにAさんのポーズで瞑想してみようかと考えたのだった。

第三の男

第三日曜日は休んでいる。
しかし、1月と5月と8月は開けている。
この法則は秘密ではないが、だれにも知られていない。
だが、開けていると、やはり、お客様はいらっしゃる。
第三日曜日のお客様の雰囲気は、何故かハードボイルドタッチだ。
どこか陰のある謎めいた人たち。
第三の男。

雨がやんだら

夏だというのに雨が三日も降り続いている。
ヘミングウェイの短編に三日吹く風というのがある。
そんなわけで、雨も三日降るとドラマになる。
ぼくは急に稲垣潤一の「ドラマチックレイン」が聞きたくなった。
できたら、雨のリグレットも聞きたい。
ともに、セピア色に褪せた遠い過去の物語。
いろんなことがあった。切ないなぁ。
雨はあいかわらず降り続いている。

食切れ

飯は食べない。
手作りの野菜ジュースをコップ一杯飲むだけ。
昼飯もあまり食べない。特に澱粉質はほとんどゼロ。
すると、夕方近くになるとゾンビのようにフラフラになる。
確かに体重は減る一方だ。いまだに減り続けている。
減量を開始して体重は12k以上減った。
減量作戦は成功したのである。が、なんか良くない。
明日から、朝食を摂ることにした。

ドミニカの絵

271_1 ドミニカコーヒーのH君が絵を持ってきた。
どちらがいいですか?
といって、額に入った二つの絵を床に並べた。ドミニカの画家が描いた絵だ。
「左かな」
ぼくは言った。
右の絵のほうが凝って手間がかかってる感じだけど、なんか暗い感じがした。
「左でいいや、明るくて」
もし作者がそばで聞いてたら気分を悪くしたかもしれない。
二人で階段にかかっていたゴーギャンのイミテーションをはずし、ドミニカの絵をかけた。
「こっちのほうがずっといい」
ぼくは言った。

いいところ

朝一番のお客様、カウンターでコーヒーを試飲しながら、
「おととい、いい所に行って来ました」と、話しはじめた。
「どこです?」
「ハト岬」
「どんな字書くんですか?」
「波戸岬。唐津にあるんです。海水浴場にサザエの壷焼き屋がずらりと並んでて、焼きたて一皿4、5個、500円」
「そりゃいいね」
「イカもうまいですよ、真ん中あたりを刺身で、残りは天ぷらにしてもらうんです。サイコー」
「行こうかな」
「国民宿舎がすぐ裏にあるので、そこに泊まるといいですよ」
「じゃあ、今度行ってみよう」

盆休みが終わった。仕事だ。
5時半起床、朝から豆を焼き続ける。今日は10種類以上焼かねばならない。
豆を焼きながら、いつの間にか「およげ!たいやき君」を口ずさんでいる。サラリーマン時代からの変なクセだ。
焼き終わってコーヒーを飲む。選んだのはモルプレミアム。フルーティーで香ばしい。
あ、秋なんだな、と思った。
盆が過ぎると時の流れは一段と加速する。
あっという間に秋が通り抜け、クリスマスソングが流れ始める。