カウンターに西日が差し始めるころ、お菓子係のN君がケーキを持って現れた。
ぼくは右奥の黄色い四角、クラゲ美女は左の三角、N君は残った丸いのを取った。
人生は選択の連続。
もしぼくが三角を選んでいたら、たぶんぼくはここにいない
流星
風呂から上がって屋上で涼んでたら、オリオン座の右側を大きな火球が飛んだ。おうし座流星群が極大、とのことだったので、もしかすると、じゃんじゃん飛ぶかも、と思い、しばらく見つめていたが、なにも飛ばなかった。首が痛くなったので部屋に戻った。
そんな月曜日
夜、エアコンを買いに行く
わが家のダイニングの空調は30年前に家を建てて以来ずっと、夏は扇風機、冬は石油ストーブ。ぼくはそれが気に入っていた。物憂げに首を振り続ける扇風機、そしてストーブに載せたヤカンが止むことなく湯気を吹いてる風景。それらはゆっくり流れていた昭和の時間を思い出させてくれる。わが家は高台にあるせいか、夏は比較的涼しく、特にダイニングは真夏でもクーラーを入れたいと思うことはあまりない。昭和風情の生活はこのまま続くように思われた。ところが数日前、「ダイニングの石油ストーブを電気ストーブにしてほしい」とヨッパライ某が言いだした。灯油を運ぶのがきついのだと。そう、ぼくたちはいつの間にか年をとってしまったのだ。軽かったものが重くなり、近かったところが遠くなる。そんなわけで、今日、仕事を終え、店じまいしたあとで、近くの電気店にエアコンを買いに行った。
OFF
揺れて満月
チリからスペイン
仕事から帰宅し、部屋に着替えに行こうとすると、「ちょっと買い物に出かけてくる」とヨッパライ某が言った。「じゃあ、ついでにワインを買ってきて、プリンスデバオの赤」とぼくは言った。ここのところずっとチリの安いワインだったので、久しぶりにこれを飲みたくなった。テーブルに料理が並び、さっそく開けて乾杯しようとすると、「1000円だったよ」と言う。「へー、そういえばラベルがピカピカになってるね。中身も上等になったのかな」などと言いつつ飲んでみたが、いつもと同じ味がする。「あまり変わらないな、価格は3倍くらいになってるのに」とぼくは言った。あとで分かったのだけど、このワイン、今日は特売日で、3本で1000円だったのだ。ヨッパライ某には「3本で」という文字が見えなかったらしい。
250万光年
風立ちぬ 今は秋
あこがれのマニュアルミッション
金曜日の男の愛車はホンダの軽バン。彼はこの車に出来立ての豆腐を積んでやってくる。この車のミッションが6速MT。なんと、あのオープンスポーツS660と同じもの。いいな~~マニュアルミッション。しかも6速。いつかまた乗りたい、とずっと思っていたけれど、残された時間はもうわずか。とほほ
ところで話はコロッと変わりますが、今読んでる春樹さんの短編集にある「かえるくん、東京を救う」という物語の中で、ちょっと気になる場面が。かえるくんが終わりの方で次のように語るんですけど
「フョードル・ドストエフスキーは神に見捨てられた人々をこの上なく優しく描き出しました。神を作り出した人間が、その神に見捨てられるという凄絶なパラドックスの中に、彼は人間存在の尊さを見出したのです。ぼくは闇の中でみみずくんと闘いながら、ドストエフスキーの『白夜』のことをふと思い出しました。ぼくは…」
え???そりゃないでしょ。かえるくんはドストエフスキーを誤解しているとしか思えない。物語の中の話に過ぎないけど、ぼくが気になるのは、もし、かえるくんが春樹さんのドストエフスキー観をここで代弁しているのだとしたら…ってこと