美女と野犬

いつものように店に向かって車を走らせていた。すばらしい天気だ。土曜の朝は道路もすいていて広く感じる。風景だって平日とは少しずつ違う。道端の木々、走っている車の色、歩道を歩いている人の服装。すべてが明るく輝いてみえる。犬を散歩させている人がいる。ファッション雑誌から抜け出したような、高級な衣装をまとった隙のない美女。犬は・・・薄汚れた野良犬。なぜ? 彼女はシッポの垂れ下がった目つきの悪い野良犬を散歩させている。奇妙だ。朝から変なものを見てしまった。

父の詫び状

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行きつけのブログを巡っていたら、「薫日記」の竹内薫さんが、その日記で怒りをぶちまけていた。題して「教科書会社に巣くう妖怪ども」。最初のほうを引用してみます。
 ———ここから———
「諸君!」3月号を読んでいたら「教科書の、向田邦子改竄」(高島俊男)という記事が目についた。なんと、向田邦子さんの文章を目茶苦茶に改竄して子供に読ませているのだそうだ。
 ———ここまで———
なぜか気になって検索してみると、改竄されているのは彼女のエッセイらしい。向田邦子のエッセイといっても、ぼくは「父の詫び状」しか知らない。それも、ある特別な事情で。向田邦子さんは子どもの頃の一時期、鹿児島市の平之町に住んでいた。「父の詫び状」は、その時の思い出が多く綴られているのだけど、そのひとコマに、同じ平之町に住んでいて彼女の同級生だった、ぼくの伯母が登場しているのです。と、そんなわけで、この日記の記事が、ほんのちょっぴり気になったのでした。
おしまい。

マンダム

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駐車場に植えてあるキンモクセイが満開だ。キンモクセイの開花時期は11月ごろだと思うのだけど、こいつは昨年からたびたび花を咲かせている。植物に血液型があるかは知らないが、几帳面さに欠ける性格からして彼はA型ではない。ご存知のように、キンモクセイは雌雄異株で、日本のキンモクセイはすべて♂である。そう、この国のキンモクセイ界はじつに暑苦しいのだ。
そういえば、かなりむかし、男性化粧品のCMにすごいのがありましたね

なんなんだ

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昼すぎ、ぼくは自分用にコーヒーをいれていた。そしてそれを飲もうとしたときに、月に一回くらいの頻度で現われる不思議な親子がやってきた。そして、推定年齢64歳の母親が開口一番こう言った。
「今日は、何も買わな~い♪」
ぼくはそれを無視して、
「ちょうど今コーヒーがはいったんだけど、飲みます?」
と言った。接客業をされている方ならお分かりと思うが、お客様の言うことをいちいち真に受けていたら狂う可能性がある。
「あら、これおいしいね。朝はこういうのを飲みたいのよ。ねー、これナニ?」
推定年齢64歳が言った。
「トラジャです。インドネシアの夜はこれがないと明けません」
ぼくは言った。
「じつは最近、悪いことが続いて」
と、約32歳くらいの髭を生やした連れが話し始めた。
「それでここに来たんです」
な、なんなんだ。悪いことが続くとここに来るという、その根拠は。
二人は最近起こったという、その悪いことを話しきり、スッキリした顔で帰っていった。
なお、トラジャをご購入いただきました。まいどあり~♪

なんでもないことが

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風邪をひいたのが先週の月曜日。ちょうど一週間が経った。
体調はほぼ戻ったのだけど、あいかわらず嗅覚がほとんどゼロ。
嗅覚が無くても、視覚や聴覚のように逼迫した不便さは無い。
慣れてしまったのか、いつもと変わりなく過ごしていた。
夕方、突然嗅覚が戻ってきた。珈琲豆を袋に詰めようとした時だ。
あっ、と思った。懐かしかった。感動した。涙が出そうになった。

エンゾのパスタ

風邪が治ったら、ニンニクのバリバリ効いたペペロンチーノを作って食おう、と決心していたので、ニンニクをしこたま入れたペペロンチーノを作った。冷蔵庫にタケノコの水煮があったので、それも入れた。うまい。死ぬほどうまい。しかし、ニンニクの匂いがしない。ぼくの嗅覚はまだおかしい。ところでぼくはパスタを食べると元気になる。と、ずっと前から信じている。それは、あの映画を見てからのこと。1988年に公開されたリュック・ベッソン『グラン・ブルー』 。ジャン・レノ演ずるジャックマイヨールの友人、エンゾのマンマが作る、あのパスタ。ぼくはあれを思い浮かべながらパスタを作るのです。
Grand_bleu

君の太陽は燃えているか

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太陽は燃えているだろうか。
いつの間にか消えてしまってはいないだろうか。
もし、それに気づかずに今日まで生きてきたのなら、そこに君はいない。
今の君は君ではない。
さあ、炉に火を入れよう。燃料を投げ込め。
君は君を起こさねばならない。
ちなみに、ぼくの太陽の燃料はシュークリームですがよ。
いったらっきま~す

匂いのない日々

風邪をひいたのが月曜日。今日で5日目。
熱は下がったし、頭痛もほとんどなくなった。
じゃあ、完治したのかというと、そうではない。
ぼくは現在、ほぼ完全に嗅覚を失っている。
ハナが詰まっているわけでもないのに。
試しに今、鼻にアンメルツを塗りつけてみたが、ヒリヒリするだけで、まったく匂わない。
当然、困っている。
珈琲の味がわからない。
味はするのだけど、味の数が、かなり少ない。
不幸だとは思わないが、しあわせが少し減っている。

夢の途中

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昨夜は早く寝た。夕食をとって部屋に戻り、寒気がするので体温を測ってみると38.5度。昨日より高くなっている。まずいと思い、ベッドに直行した。ふとんをかぶって、うとうとしていると、目の前に妙な光景が浮かんできた。ガラス鍋を火にかけ、だれかが料理を作っている。ことこと煮立った湯に、小さなタマネギのようなものを放り込んでいる。その細い指は見えるが、それがだれのものかわからない。ぼくは子供のように、わくわくしながらそれを眺めていた。とてもリアルな光景だった。