コーヒー飲みながら映画のはなし

夕方いらしたお客さんと、ある映画について語りあった。その映画とはフェリーニの「道」
お客さんは、綱渡り芸人がジェルソミーナに語って聞かせた次のことばが印象に残ったという。
「おれは無学だが何かの本で読んだ。この世の中にあるものは何かの役に立つんだ。例えばこんな小石でも何か役に立っている」
「どんな?」
「おれなんかに聞いてもわからんよ。神様はご存知だ。お前が生れる時も死ぬ時も人間にはわからん。おれには小石が何の役に立つかわからんが、何かの役に立つ。これが無益ならすべて無益だ。空の星だって同じだと思う。お前だって何かの役に立ってる。アザミ顔のブスでも」

Cucumber and Rose

140917_01 夏の初めに100円ショップで買ったビーサン。鼻緒の付け根にヒビが入っているけど、まだ使えそう。でももう秋だよ140917_02 チェコの土産は甘い香りのするヨウカンだった。ぼくは「キュウリとバラ」と書いてあるのを選んだ

昔知っていて、でも、なくなってしまったもの

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海どりの声はさびしくて、美しくて、なにか、とても遠い昔のひびきがありました。昔知っていて、でも、なくなってしまったもの、そして、それきり二度とみつけられなかった、すばらしいなにかのことを、アンナに思い出させました

これはロビンソンの「思い出のマーニー」(岩波少年文庫)の一節。
こういう文に出会うと、遠い昔、どこかでなくしてしまった何かを探しに出かけたくなる

チャンピオンベルト再び その4

一昨日の夜、いつもの作業を終えたぼくは腰のチャンピオンベルトを外し、外の空気を吸おうと雷鳴のとどろくベランダに出た。ドアの横には水道の蛇口があり、その下にレンガと杉板で作ったネコの水飲み台がある。ふと見ると、皿を載せた台の下から濡れた毛皮がはみ出ている。やれやれ、またか。ぼくは台の下にちぢこまっていたネコを引きずり出し、それを拾い上げて木の樽でできた彼の家に抱えて行った。問題が起きたのはその後だった。椅子に座ろうとしたとき、思いがけず右ひざに激痛が走った。なんで?ネコをつかみ上げるとき膝をひねったのだろうか。いやそんな覚えはない。結局、原因は分からなかった。その夜は膝が痛くて寝返りを打つこともできなかった。翌朝、店で珈琲を焼いていると古い友人Fが来て不機嫌そうにつぶやいた。足の裏がマヒして冷たくなってね、変だと思って病院に行ったら、椎間板ヘルニアだそうだ。手術はしなくてもいいらしい。それを聞いてぼくは思い当たった。数日前から左足の先がしびれてマヒし、冷たく感じていた。さっそくネットで調べてみると、その症状の中には「足がつる」というのもあった。運転中や夜中に足がつるのには、半年ほど前から悩まされており、これといった原因もつかめず、とりあえず水分不足だろうと見当をつけて、寝る前には多目の水を補給していたのだった。昨夜もコップ5杯の水を飲んで寝た。もし、足がつる原因が椎間板ヘルニアだとすれば対策の打ちようがある。前かがみの姿勢を長く続けたり、何かを拾い上げるような動作が腰の痛みを悪化させることは分かっている。思えば一昨日の夜、ネコをつかみ上げたときに痛めたのは膝ではなく腰だったのだろう。腰から伸びる神経が膝で警告を発したのだ。あのとき、チャンピオンベルトを巻いていたなら問題は起きなかったかもしれない。