愛は花

151110_01 高校生のときだったと思う。わが家に、その当時流行していた4チャンネルのステレオ装置がやってきた。ぼくは小遣いで買った井上陽水のレコードを日夜かけては深く感動していた。ぼくが「愛は君」という名曲を大音量で鳴らしていたときのことだ。父がやってきて、そんな恥ずかしい歌をかけるのはやめてくれ、近所に聞こえるじゃないか、と言った

いちばんだいじなこと

151108_01 ここは見せ物の世界
何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら
すべてが本物になる
(It’s Only A Paper Moon)

ひとこと言いたいんだけど聞いてくれるかな。

私を信じてくれたなら ← ここがいちばん大事。それだけ

二人の世界

人は誰しも、客観的な世界に住んでいるのではなく、自らが意味づけをほどこした主観的な世界に住んでいます。あなたが見ている世界は、わたしが見ている世界とは違うし、およそ誰とも共有しえない世界でしょう (岸見 一郎、古賀 史健 著 嫌われる勇気 より)

愛し合う二人は、まずこのあたりから学ぶべきでしょう

フローズン

151105_01 今週は荒井由美の「ひこうき雲」を何度も聞いている。ぼくにとって音楽は薬のようなものだから、そのときのメンタルコンディションに合わせて適切な音楽を選び、処方することになる。だから繰り返し同じ曲を聞くというのは、ぼくの中の特定の箇所が微熱を発していることを意味する。かも。さて、彼女のエッセイ集、ルージュの伝言に、「ひこうき雲」を作った動機が書かれているのだけど、初めてこれを読んだとき、ひどくがっかりしたのを憶えている。ぼくが脳裏に描いていた「ひこうき雲」のイメージからあまりにかけ離れていたものだから。でも今は違う。彼女のエピソードを知った上で聞く「ひこうき雲」がとてもいい。以下、松任谷由美のエッセイ、ルージュの伝言より抜粋しますが、あるいは読まないほうがいいかもしれません。

小学校のときの同級生の男の子に、筋ジストロフィーの男の子がいたわけ。子供だからそんなむずかしい病名はわからずに、なんかリハビリみたいなことに早びきをしてよく行ってるなって感じだった。すごい金持ちのうちの子でね。親が年取ってから生まれた子だったらしい。家にプールつくったりしてたのよ。公立だから、ほんとに貧しい鼻たれ小僧もいて、みんなでそこんちに泳ぎに行ったりしてたのよ。それだけにすごいわがまま坊主でね。足が悪いわがまま坊主なのよ。私、たとえばお掃除で机を運んだりするときにね、「そういう足の悪いふりをするのはやめなさいよ」とかってその子にいっちゃうのよ。それ、優しさだと思っていうのね。ほんとはできるんでしょっていう気が、そんな単純な心理じゃなかったのかもしれないけど、あったんだと思う。そうすると親が「あの子はほんとにできないんだから、そういう傷つけるようなこと言わないでくれ」っていいに来るわけ。私、先生に呼ばれて、「どういうつもりなんだ」っていわれたことがあったんだ。その子が高校一年のときに死んだの。お葬式に呼ばれて行ったら、写真が、もう知らない写真になってるわけよ。小学校以来全然会ってなかったから。私は小学校のときの友達とかには会いたくないほうだし、私立に行っちゃってたからみんなに会うのは久しぶりだったの。そのときに期せずして小学校の同窓会みたいな感じだったんだ、そこの雰囲気が。そのとき思ったの。ああ、結局昔のことっていうのはフローズンになっちゃうんだな、と。写真とかだけが大人の顔しててさ、高校生の顔しててさ。それでそのことがけっこうインパクトがあってつくった歌が「ひこうき雲」って歌。

いい日旅立ち

151104_01 午前中、店のBGMは山口百恵だった。なぜかそんな気分だった。あの頃の曲はよかったね。カウンターで珈琲を飲んでいた女性がしみじみと言った151104_02 昨夜はローソクに火を点す日だった。せっかくなので、写真撮影にはローソクに初めて火を点した年に購入したレンズを用いた。今日もそのレンズを使った。あの頃の曲とどこか似た、心地よいぬくもりのある写真が撮れた

今日は何の日

151103_02 というわけで今日は年に一度の、大きなローソクに火を点す日151103_01 できたら1000円くらいのワインで乾杯したかったのだけど、ヨッパライ某が買ってきたのは、いつもの400円の赤ワイン。ま、いいか。味のわからない二人だから

虚構の人たち

151027_01すくなくともラカン派的な視点から見れば、虚構と日常的現実とは、ともに「想像界」に属するという意味で、本質的な区別はありません。

斎藤環「脳は心を記述できるのか」第3信より

うまくんとお散歩

151026_04今日はどこに行ったんだい?
海の見える公園。バラが咲いてるんだ
たくさん咲いてた?
咲いてたよ、いい匂いがしてた
ふーん、ぼくも行きたかったな
いつか行けるよ
ところで明日は雨らしいね
ああ、晴れの日が何日も続いてたから
雨の日はきらいなんだ。だれもこないし
うまくんは何してるの
ずっと雨を見てる。大きな水たまりができることもあるよ
水たまりを見るのはいいね
でもたいくつだよ、ほんとに。一日が長いんだ
そうかもしれないな。雨の日はきっと思い出すよ、うまくんのこと
ほんとう?
もちろん
うれしいな、ぼくもそうする

月夜

151025_01 月が明るかったので散歩に出かけた。公園を突き抜け、坂を下り、街灯のない道をとぼとぼ歩いた。月がなければ真っ暗な道。ふと、だれかが後ろにいるように感じて振り返るが、だれもいない。川に出た。川の流れる音を左手に聞きながら川を上っていく。月の光が真上から降り注いでいる。冷めた青い光。どこかで犬が吼えはじめた。この世のものとは思えぬ奇妙な声。宇宙語で話しているように聞こえる。しばらく歩くとまた川の音だけになった。ぼくは川を上っていく