昨日、クーラーのスイッチを入れたところ、ついに恐れていたことが起きた。忘れかけていた、あの懐かしい青春のニオイがクーラーから吹き出してきたのだ。コーヒー屋に青春のニオイはいらない。青春のニオイは運動部の男子部室にこそふさわしい。というわけで、今日はいつもより2時間早く店に来てクーラーの分解清掃を始めた。外装を外し、洗剤を噴射しながら丁寧に洗う。ぬるま湯で十分にすすいだ後、乾燥させ、元通り外装をかぶせて終了。こう書くと簡単そうだが、けっこうめんどくさい。スイッチを入れると、あの懐かしい青春のニオイはどこかに消えてしまっていた
雨のウエンズデイの午後
朝からどんよりした曇り空で、なんだか気分も湿りがちだった。店に着き、ラジオをつけるとスピーカーから山下達郎のWINDY LADYが流れ出した。湿った空気が少し乾いた気がした
午後から雨が降り出した。なんとなく古い歌謡曲が聞きたくなって、苦いコーヒーを飲みながら飽きもせず延々と聞き続けた。日が沈むころ、Gメン75のエンディンテーマがスピーカーから流れだした。どういうわけか、これが驚くほど今日の気分にマッチしていた
正義は勝つ
夕食後、ぼくはお客さんからいただいた菓子箱をテーブルの中央に置き、ふたを取った。中には独自の造形美をまとったアートレベルのシュークリームが四つ入っていた。一つ一つ微妙に形が違うのは手作りの証である。テーブルを囲む三人はそれを厳かに手に取り、おもむろにかぶりついた。完璧だ。箱にはシュークリームが一つ残った。平和的解決法はじゃんけん。おそらくヨッパライ某は辞退するだろう。でも、ゲームは人数が少ないと盛りあがらない。ぼくは言った。遠慮してもいいけど、じゃんけんは三人でやろう。すると、すかさず息子が言った。もしお母さんが勝ったら、ぼくにちょうだい。ぼくは耳を疑った。なんて奴だ。
ゴングが鳴った。
じゃんけんざらめがすいきった! まず息子が脱落。ふっ、当然だ。
じゃんけんざらめがすいきった! Winner ぼく。当然だ